藤の花と私

文字数 266文字

 私は五月に生まれた。
 実家のすぐ近くにある公園には小さな藤棚があり、毎年その時期になると、綺麗な薄紫の花を咲かせていた。幼い頃、母に連れられてよくその公園へ行き、藤の花を見上げたものだった。
「藤はれいちゃんの花だよ」
 いつか母に言われたその言葉は、数十年経った今でもはっきりと頭に残っている。たぶん母は、何気なく思いついて言ったのだろう。しかしそれ以来、私にとって藤は特別な花となり、幼心に「藤は私の花」と思い、眺めるようになった。
 それは大人になっても変わらず、まるで母からの贈り物のように感じられる藤は、今でも一番好きな花だ。
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