第1話

文字数 824文字

【起】
主人公の雅(みやび)は小学5年生のごく平凡な元気な女の子。勉強と体を動かすことが、とにかく大好き。「もう少し、女の子らしくしなさい」と親に叱られた夜、学校の宿題で「お月見」をしていた。今日社会で習った平安貴族って、恋愛や楽器の演奏ばっかりして、のんきな生活でうらやましい。私もそういう時代に生まれたらよかった。雅がそんなことを考えながら月をながめていると、突然霧がたちこめて、周りが見えなくなった。
【承】
霧が晴れると、そこは見知らぬ場所だった。あわてる雅の前に、着物姿の女の人があらわれた。社会の教科書の平安貴族とおんなじ衣装。その人はなんと、あの有名な紫式部だった。雅はなぜか、平安時代の京の都にワープしてしまったのだ。
【転】
自分の家もわからず困っている雅に、同情する式部。雅が漢字を読めることを知ると、式部は雅のことを面白がって、「記憶がもどるまで、私のところにいていいわよ。」と言ってくれた。式部の言葉にあまえ、元の世界にもどれるまで、雅は平安貴族ライフを満喫することにした。せめてもの恩返しに、式部の作品づくりのため、花のイケメン公達方や、深窓の姫たちの取材を手伝う雅。予想の斜め上をいく華やかな貴族の世界。イケメンなうえ、動作のはしばしまで優美な公達にドキドキしたり、たおやかなようで中身は男前の姫に一生ついていきたい、と憧れたり。まばゆい世界に、ときめくばかりの毎日。
【結】
しかし、取材をかさねるうち、雅は華やかな生活の裏にかくれた平安貴族たちの悩みをも知ることになる。両思いでも、身分のちがいでかなわぬ恋の切なさ。親の失脚で引き離された恋人たちの悲しみ。どんなにお金持ちでも、楽しいばかりの人生なんて、ないんだな。みんなそれぞれ悩みがあって、それは今も千年前もかわらない。そう気づいたとき、雅は現代にかえっていた。そして、改めて式部の書いた現代物語をよんでみる。そこには、悩みながらも式部が願いもとめた、希望や夢がつまっていた。
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