第1話 子ども扱い

文字数 615文字

僕は、ある病院の診察が済んで、待合室にいた

なかなか受付の呼び出しがなかったので

病院のガラス張りの3メートル四方くらいの玄関に出てみた

そこには、若い女性が赤ちゃんを抱き抱えていた

その時、僕はマスクをしていなかった

女性は、すぐさま玄関を出て、病院の庭の遠く離れたところに立った

そして、ムッとした顔をして、大きな咳払いをした

それに気づいた僕は、マスクをつけた

しばらくすると、僕の目の前にあった、コロナ用の消毒液の前に

3、4歳くらいの小さな女の子が来て

少し手の届かない消毒液に、一生懸命背伸びをしている

お母さんが来て、少し抱え上げてあげると

女の子は、やっと少しだけ消毒液を手につけた

そして、すこしたつとまた来て背伸びをしている

お母さんが「何度もやっちゃダメよ」と言うが

その女の子はなかなか諦めようとしない

そこで僕は「おてて、痛い痛いになるよ」と言った

女の子は背伸びをするのをやめて

その場にじっと立って、何かしかめっ面で考え事をしている

不思議に思ったが、何を考えているのか見当もつかなかった

しばらくすると、女の子は、お母さんの大きなバッグを借りて

背中に背負おうとした

自分の体より大きいバッグだから、当然その子はよろけて

その場に座ってしまった

あきらめたその子は、お母さんと一緒に庭のベンチに座った

そして僕はようやく気がついた

その子は僕に子供扱いされたのが悔しくて

自分でも大人の荷物がしょえるんだと

僕に見せたかったのに違いない

すこし僕は反省した
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