第1話

文字数 989文字

 あー……眠れないなぁ。

 明日も1限からあるって言うのに、もうこんな時間になっちゃった。今日なんてほんと、バイトから帰ったあと、友達とちょっとラインして撮りためたドラマ見たくらい。あとはなにかしたって覚え全然ないのに、もう日が変わっちゃってるし。慌ててシャワーだけザザッと浴びて、とりあえずベットには入ったけど、ちっとも眠くなる気配がない。

 普段なら最悪、明日の1限休んじゃえって思うところなんだけど、困ったことに、明日の1限はね。ほら、アイツも取ってるコマだから……。その、ちょっとでも会えるかもしれない機会は大事にしたいって言うか。顔だけでも見れたら嬉しいっていうか……。
 なに私、超恋する乙女じゃん。くぅー我ながら似合わない。似合わないのはわかってるけど、一度動きはじめちゃった恋は止まってくれないのよね、わかるわかる超わかるよ私。

 最初会ったのは同じ語学のクラスのときで、正直、第一印象は別になんでもなかった。暗そうでさえない男の子だなぁくらいで、名前もだいぶ先まで知らなかったし。
 それがなんかこう気になりだしちゃったのは大学の本屋で、棚の上の方にある本を取ってくれたとき。「あ、この人、大きいんだな」ってなんかそんな新鮮な驚きがあったというか。いやもちろん私の背が低いだけで、別にアイツがそんなに背が高いわけじゃないんだけどさ。
 でもそのときはそうやって思ったの、「大きいんだな」って。それにアイツ、私の名前も覚えててくれてさ。そのとき私はまだ名前ちゃんと覚えてなかったから……、あたふたしながらお礼だけ言って逃げてきちゃった。
 それで、なんだか気になるようになっちゃって、いつのまにか目線で追うようになって、こうして夢にも出てくるようになる、と。……いや、今日はまだ寝てないけど。
 我ながらベタだなぁとか思うけどさ、結局女子ってのはベタが好きな生き物でしょ。

 明日はアイツに会えるかなぁ。せっかく頑張って1限行っても来てないことも結構あるし。会いたいよなぁ、会えないかなぁ。でも寝不足のヒドイ顔で会うくらいなら会わない方がマシか。だから、とにかく今やるべきことは早く寝ること。羊が1匹羊が2匹……。――というか、あの骨張った細くて長い指がグッとくるのよね。で、そこにこう青黒い血管がスッとはしってて……あーダメ。好き。やっぱ好きだわ私。

 早く明日にならないかなー。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み