第1話/プロローグ・蘇った記憶
文字数 1,017文字
これから始まるのは、
何処かの誰かが抱き続ける思い出話。
特別でも何でも無い、
魂を持つ生命なら誰にでもある、
『過去世』の物語。
そもそもの始まりは秋も深まるとある日の事。
とある地方に暮らすとある女性は、とあるヒーリングショップに通っていた。
天然石も販売していたそのショップは、元来スピリチュアル好きな女性にとって不思議に満ちた楽しい癒しの場であった。
女性が特に楽しみにしていたのは、オーラヒーリング。
人間が纏うオーラにヒーリングを行うという未知の領域に、女性が踏み込まない訳も無く、瞬く間にリピーターとなって何度か足を運び施術して貰った。
そして、運命の日。
何度目かの施術を受けている最中、ヒーラーが女性の胸の辺りから大きい何かを力一杯引き抜いていく動作を見せ、次第に女性の意識から『記憶』が流れ出てくる。
戦場の中。
槍に心臓を貫かれた女性。
死にゆく意識の中、
涙を溢し慟哭のままに女性に呼び掛けている、人。
瞬間的に女性は理解した。
これは『過去世』だ、と。
それは女性の今の人生において全く心当たりが無く、しかし確実に自分の事だと納得していた。
不思議では有るが、しっかりとした確信があった。
今思えばヒーラーが何かを引き抜いた事により、魂の記憶の一部が蘇ったのだろう。封印が解けた、という表現がしっくりくるものだった。
そして死の瞬間から、芋づる式でまた違う人生の場面が次々と溢れる。女性の意志では無く、掘削した地面から湧き水が出てくるのと同じ感覚で、止める事など出来はしなかった。
(余談。一般的に過去世を思い出す時は自分が死ぬ瞬間からというのが多いらしい)
その時、かつての女性が死に際に残した後悔は、「あんな顔をさせるとは思わなかった」「お前が死ぬまでずっと一緒に居てやると約束したのに」だったらしい。
大事な存在の目の前で死んでしまった。置き去りにしてしまった。その感情が今を生きる女性に伝わり、女性自身もヒーラーの前で泣き叫んでしまったとか。
…この辺りは、これから少しずつ語っていく思い出話によって明らかになるので、ここで多くは語らない。
とにかく、それが全ての始まりだった。
本当に人生は何が起こるか分からない。
ヒーリングで過去世の記憶が蘇るなど、欠片も想像していなかった。らしい。
そんな魂の経験を、今回、少しでも書き記しておくべくこの場を借りた。
かつてのお師匠様、兄弟子、十五人の教え子達、親友、…今を生きる大切な人に、物語を捧ぐ。
とある女性より。
何処かの誰かが抱き続ける思い出話。
特別でも何でも無い、
魂を持つ生命なら誰にでもある、
『過去世』の物語。
そもそもの始まりは秋も深まるとある日の事。
とある地方に暮らすとある女性は、とあるヒーリングショップに通っていた。
天然石も販売していたそのショップは、元来スピリチュアル好きな女性にとって不思議に満ちた楽しい癒しの場であった。
女性が特に楽しみにしていたのは、オーラヒーリング。
人間が纏うオーラにヒーリングを行うという未知の領域に、女性が踏み込まない訳も無く、瞬く間にリピーターとなって何度か足を運び施術して貰った。
そして、運命の日。
何度目かの施術を受けている最中、ヒーラーが女性の胸の辺りから大きい何かを力一杯引き抜いていく動作を見せ、次第に女性の意識から『記憶』が流れ出てくる。
戦場の中。
槍に心臓を貫かれた女性。
死にゆく意識の中、
涙を溢し慟哭のままに女性に呼び掛けている、人。
瞬間的に女性は理解した。
これは『過去世』だ、と。
それは女性の今の人生において全く心当たりが無く、しかし確実に自分の事だと納得していた。
不思議では有るが、しっかりとした確信があった。
今思えばヒーラーが何かを引き抜いた事により、魂の記憶の一部が蘇ったのだろう。封印が解けた、という表現がしっくりくるものだった。
そして死の瞬間から、芋づる式でまた違う人生の場面が次々と溢れる。女性の意志では無く、掘削した地面から湧き水が出てくるのと同じ感覚で、止める事など出来はしなかった。
(余談。一般的に過去世を思い出す時は自分が死ぬ瞬間からというのが多いらしい)
その時、かつての女性が死に際に残した後悔は、「あんな顔をさせるとは思わなかった」「お前が死ぬまでずっと一緒に居てやると約束したのに」だったらしい。
大事な存在の目の前で死んでしまった。置き去りにしてしまった。その感情が今を生きる女性に伝わり、女性自身もヒーラーの前で泣き叫んでしまったとか。
…この辺りは、これから少しずつ語っていく思い出話によって明らかになるので、ここで多くは語らない。
とにかく、それが全ての始まりだった。
本当に人生は何が起こるか分からない。
ヒーリングで過去世の記憶が蘇るなど、欠片も想像していなかった。らしい。
そんな魂の経験を、今回、少しでも書き記しておくべくこの場を借りた。
かつてのお師匠様、兄弟子、十五人の教え子達、親友、…今を生きる大切な人に、物語を捧ぐ。
とある女性より。