第1話

文字数 979文字

時刻は24時50分、
仕事の疲労で、食事も取らず、いつのまにか眠っていた。
(なんか、ものすごく懐かしい夢だったな...)



いつもは思い出せない夢、だけど今日は違う
ぼんやりとだけど思い出せる


あの時は青春を謳歌してたし、何より“今も生きていた”
今の私とは大違いだ...


“戻りたい”

それと同時に深い眠りに包まれた



.


ギラつく太陽が私の肌を日照らせる。
汗と制汗スプレーの匂いが混じり少し酔ったように気持ち悪くなる。
でもそれも一時的なもの
だってこれから、


私は気持ち悪さを吹き飛ばし爽快に走るのだから。


.


「キノ、お疲れ様。また最高記録だよ、もうほんと凄い」
「そんなことないよ」


“また記録を更新できた”
記録を更新することは、女子がスイーツを食べて幸せを感じるのと同じ。
いや、私にとってはそれ以上かもしれない。



そして、


「きーちゃんは、ほんと、努力家だよな」


“きーちゃん”
私をそう呼ぶのは一人しかいない
憧れの“ひかる先輩”



同じ陸上部で、エース、
端正な顔立ちと爽やかで気さくな雰囲気の彼は男女共に好かれる。
そして、私もそのひとりだったりする、



「ひかる先輩のフォーム綺麗で本当に尊敬しています」


陸上部に入部しなければひかる先輩とこうやって話すこともなかったんだろうなと思う。
誰からも好かれる彼と私では月とすっぽんで、
泣きたいぐらいに釣り合わない。


ま、といっても彼にはもう既にお付き合いしている人がいて、
そもそも私なんて眼中に無いと思う
けど、


「ありがとう、きーちゃんにそう言われるとほんと嬉しい」



彼は無自覚で意識なんて本当にしてないだろうけど
そういう一言でさえ私は感じてしまい、
好き、の気持ちが溢れてしまう。
けどね、


(苦しいよ...)

ものすごく、涙が出そうになる。



.


甘酸っぱく、切ないそんな高校時代の一部、
“25時”


(また眠ってたんだ...あれ、なんだか)
ぎゅっと苦しい、けどものすごく、幸せな気分に満ちている。


こんな気分は何年振りだろう
毎日が憂鬱で、仕事に行きたくないそんな日々が続く中で
きっと、“神様”は私にチャンスを与えてくれたに違いない



少しでも不安や緊張、自分の中にある黒い塊を取り除いて
“もっと気楽にいきようね”
そんなメッセージを伝えたかったのでは?と思う


(神様、ありがとう...)


私はもう一度、
キラキラしてたあの日常を
過去には戻れないけど、現在の大人な私で“再現”してみたい


























ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み