天使達の罪の無い遊び

文字数 735文字

「先生、キリスト教原理主義と福音派と云うのは、どう違うのでしょうか?」
 TV番組の司会者は、WEB会議アプリを使って出演している学者にそう聞いた。
 その日の、その報道番組の特集は「アメリカ政治におけるキリスト教の影響」だった。
「同じモノです。元々は『キリスト教原理主義』が自称だったのですが、ある時期以降、例えば『イスラム教原理主義』などのように『原理主義』が悪い意味に使われるようになったので『福音派』を自称として使うようになったのです」
「では、そのキリスト教原理主義の特徴としては、どのようなものが有るのでしょうか?」
「例えば、終末論ですね。いずれ、今の世界は終り、神が支配する世界が実現する以上、環境問題を解決しようとしても意味は無い、と考え、自然保護運動・環境保護運動には反発する人が多いですね」
「終末論と言いますと、例えば、どのような……?」
「福音派には携挙と云う考えが有ります。彼等は『世界の終りの直前に様々な災害が起きる』と信じていますが、その災害の前に神が正しい信仰を持ったキリスト教徒をこの世から救い上げてくれると考えている人が多く……うわぁっ?」
「先生……あの……先生……どうしました?」
 その学者の姿は突然、消えた。
 まるで、その学者が説明しようとした「携挙」のように。
 だが、その学者は、あくまで学者である以上、「キリスト教を外から観察する者」であって「正しい信仰を持つキリスト教徒」では有り得なかった。

「ミカちゃん……下手だね。あたしが代りにやってみようか」
「そう……じゃあ、やってみて……」
「ほら……こうやるんだよ」
「え〜、でも、ガブちゃんが取ったの、レアものじゃないじゃん」
 その頃、天界の一画では、2人の天使がクレーンゲームで遊んでいた。
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