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文字数 955文字

 20xx年 11月15日 移行操作1日目
 No.5に特にこれといった変化はなし。暫く様子を見ることにする。

 ピッ、ピッ、ピッ、と等間隔で刻まれる音が室内に響いている。音だけなら病院でよく見るアレに似ているが、それではない。だって、繋がっている先は上半身ではなくて頭部なのだから。
 よく分からない、とにかくなんだかコードがいっぱいついているヘルメットのような物を装着している男の子。と、その線の先には人間とそっくりな姿をしている、つるりとした光沢を持つアンドロイド。中央にはこれまたよく分からない大仰な機械があるけれど、それに関してはこの先は触れないでおこう。ここには分かる人がいないから。
「ねぇねぇ」
 不意に、男の子が声を出した。手足がひょろりとしていて、なんだか頼りない。だけどその声ははっきりとしていて、混じりっ気のない無邪気さがある。小学校の半ばくらいの子だろうか。まぁ、それに関しては何だっていいんだ。この際。
『……何?』
 かすかな機械音を立てて、少し離れて隣にいるアンドロイドが男の子の方を向きながら応える。遠目で見れば、本当にホンモノの人間のようだ。雰囲気的に抑揚がないことを除けば、の話だけど。温度の感じられない視線が男の子にまっすぐ刺さるけど、当の男の子はそれを全く気にも留めていないらしい。寧ろ、恐れるどころか瞳を輝かせる始末。嬉しそうにまた口を開いた。
「わぁ! 本当に喋れるんだ!」
『そうだよ、だってトップクラスの技術を駆使したAIを搭載しているアンドロイドだから』
「……えーあい?」
『……分からないならいい、とにかくそういうことだから』
「え、ねぇ! キミ、僕とお話しできるってことだよね!」
『そうだな、基本的にどんな人間とも日常会話はできるようにはなっている』
「じゃあ僕とお話ししようよ! 折角一緒にいるんだもん!」
『……あぁ、うん。分かった』
 やったぁ!と男の子はこれまた無邪気に喜んでいる。アンドロイドは、少し予測できない会話の切り返しで多少悩むことはあっても、知能を使って上手く返しているらしい。しかしこの男の子、この状況下でもここまで平然としていられるのが面白い。……え、これめちゃくちゃ個人的な感想すぎないかって? いいじゃないか、そんな堅苦しくならないで。気ままにいこうよ。
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