第1話

文字数 964文字

さっきお母さんから電話があった。

「もしもし、お母さん、どないしたん?」
「アンタなんべんも電話してんのに。とりーな。今何してんの?」
「寝てた。」
「寝てたて。そやオモたわ。たっかいお金はろてんのに、勉強せなあかんがな。」
「今日はこれから。お母さんも、もっと寝なアカンのちゃうの?ほんで何?」
「お父さん今日誕生日やから、電話したげてな。」
「え?今日やっけ?明日ちゃうかったっけ?あ、そうか。今日か。今お父さん何してんの?」
「もう寝てる。」
「ほな、起きる頃、電話しょうかな。あ、彼氏と一緒にいると思うから紹介しよかな。」
「アカンて。まだ早いて。お父さん、大阪弁の人やないと認めへんから」
「大阪弁とかそういう問題やないと思うけど。」

「お父さん最近元気ないねん。」
「もともと元気ないやん。」
「もともと元気ないけど、さらに元気ないねん。お母さんには分かるねん。私と喋ってても「うん」と「そやな」しか言わへんねん。」
「もともと「うん」と「そやな」しか言わへんやん。お母さんが喋りすぎやねん。」
「いや、ちゃうんねん。前までは「うん」と「そやな」と「任せるわ」があってん。最近全然任せてくれへんねん。」
「お母さんに任せてたらえらいことなるってやっとわかったんやろ。」
「いや、ちゃうねん。なんか頼りがいあるねん。お母さんには分かるねん。最近なんか変やねん。」
「なにが変なん?」
「パソコンこーたんや。包丁持って厨房に立つしか能のない人やのに。最近、遅くまでずっとパソコンやってんねん。エクセル使えるようにならな言うて、本買ってはったわ。アンタに電話して聞いたらええのに言うたら絶対言うたらアカンで言うねん。」
「うん。」
「でな、俺がもし死んだら保険はこうなってて、とか言うてくるねん。」
「うん。」
「昨日なんかな、お前と結婚できて子供も大きなってよかったわとか言うてくるねん気色悪いやろ。」


「店は?」
「なんとか閉めんとやってるよ。従業員さんも一人も辞めずや。」


「わかった。電話ありがとう。お父さんに補助金申請するときエクセル作るよて言うといて。昼から授業やから、行ってくるわ。ありがとう。また、夕方おめでとうの電話するわ。」
「うん。朝イチで電話して。ダニエル君にもよろしゅうな。アメリカもまだ、コロナ流行ってるし気ぃつけや。」
「は〜い。」

ちゃんと授業いこ。

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