プロット

文字数 1,369文字

【起】
2021年、世界の日常はカタチを変えた。桜木(さくらぎ)高校合唱部の部長を務める伊波(いなみ)希美(のぞみ)の日常も大きく変化していた。新型ウイルス感染拡大の影響により学校の休校、及び部活動の中止。1つ上の先輩が引退し、部長を任されたことで「次は自分が頑張らなくては」と気合を入れ直した矢先のことだった。
なんとか部活動再開が許可されたものの、限られた時間と制限された練習で思うようにいかない日々。また、4月からしばらくの間休校だったためか、合唱部の新入部員は0人だった。さらに追い打ちをかけるように、新型ウイルス感染拡大防止のため合唱コンクールの中止が決まってしまう。

【承】
 合唱部の活動の集大成を見せる場ともいえる合唱コンクールの中止により、部内には暗い雰囲気が漂っていた。そんな希美をはじめとする部員たちに、合唱部顧問である佐々木恵子は「何かひとつ、残しましょう」と声をかける。
 少ない部員での話し合いの結果、10月にある文化祭に向けて自分たちで歌を作り、その曲を合唱することに決まる。作曲は佐々木先生が、歌詞は部員たちが考えることになった。
 おとなしいけど責任感が人一倍強い希美。ツンの割合の高いツンデレ、(つむぎ)。ピアノの天才と名高い後輩、(しゅん)。仲間思いの瞬のマブダチ、来人(らいと)。そしてインターハイ中止により見せ場を失ったバレーボール部所属の希美の親友、光莉(ひかり)を仲間に加え、個性豊かな桜高(さくこう)合唱部は文化祭に向け活動を再開する。

【転】
 初めての作詞に戸惑いながらも活動を続ける合唱部。時にぶつかり合い、すれ違いながらも希美たちは絆を深めていく。
 そんな中、佐々木先生の夫が新型ウイルスに感染してしまう。身内の感染を受け、佐々木先生はしばらく学校を休むことになる。さらに、全国的に感染が拡大したことにより、文化祭の中止が決まってしまう。今年の活動の集大成を2度も奪われてしまった合唱部はバラバラになってしまう。
 わたしたちの高校生活はこんなはずじゃなかった。どうしてわたしたちだったんだろう。
 みんながそれぞれ抱える不満。でも、もう助言をくれる先生はいない。
 希美は部長として「まだ諦めたくない」と、立ち上がる。合唱部で話し合いを重ね、学校の屋上からライブ配信をさせてもらえるように先生たちに直談判することに。
 反対意見も多い中、感染対策を徹底し室内ではなく屋外で行うという部員たちが一生懸命考えた企画書に頷いたのは校長先生だった。

【結】
 無事、屋上での無観客ライブ配信が許可された合唱部。希美が作った『桜高合唱部』のアカウントは合唱部の活動を聞きつけた多くの桜高生にフォローされていた。
 いよいよ迎えた本番。未来への希望を願う、合唱部の歌声が屋上に響き渡る。
 ライブ配信をみていたのは桜高生だけではなかった。噂を聞きつけた他校の学生。卒業した先輩。最後まで反対していた教頭先生。そして、自宅待機中の佐々木先生。
 聞き手がいない、学校の屋上。歌声を競い合うライバルも、審査員もいない。でも、『桜高合唱部』のライブ配信はたくさんのメッセージで溢れていた。
 先輩もやったことのないことをやり遂げた合唱部は、今まで感じたことのない達成感に満たされていた。
 青春は作れる。
 それを自分たちの手で証明した合唱部に新入部員がやってくる。新たな希望を胸に、桜木高校合唱部は今日も歌い続ける。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み