純粋な子供は妖精が見える

文字数 800文字

とある古い屋敷で事件が起こった。
屋敷内から屋敷の主の宝が消えたのである。
ただちに警察が呼ばれるが、宝は一向に発見されなかった。

そこで探偵が呼ばれることになった。
一人は屋敷の主が呼んだ、凄腕と呼ばれる大人の名探偵。
一方、屋敷の召使いの知り合いという少年探偵も呼ばれていた。

「なんだい君は。ここは子供の遊び場ではないんだぞ」

名探偵は少年探偵を小バカにするように呟く。

「あなたこそ、名探偵なんて呼ばれていて恥をかかないといいですね」

少年はそう返すと、一人屋敷の中を探し始める。

「ふん、生意気な……」

そう言って、名探偵も屋敷の捜索を開始する。
だがそれから数時間経過するも、変わらず宝は見つからない。
屋敷の主は早く見つけるよう声を荒げた。

「主も無茶を言う。すぐに見つかるようなら警察が見つけているというのに……」

名探偵は「やれやれ」と首を振った。
だが、その数分後……。

「見つけました!」

少年探偵が物を持って駆けてくる。
それは紛れもなく、屋敷の主の宝であった。

「バ、バカな!? あれほど探しても見つからなかったのに。
私が見つけられずに、こんな子供探偵が見つけただと!?」

名探偵が少年探偵に詰め寄る。

「言え! どこでそれを見つけた!?
屋敷内は私もくまなく探したんだぞ!」

少年探偵はゆっくり、名探偵の詰め寄る手をどけると笑顔を向ける。

「妖精さんが見つけてくれたんですよ」
「妖精? はっ、バカにするのもたいがいに――」
「信じられないならそれでもいいですよ」

少年探偵は依頼主である召使いの元に向かうと、
挨拶をして帰っていく。

「ま、待てっ!」

名探偵が止めようとするが、大きな扉は重い音とともに閉じた。

「くそっ! 私の依頼が! 依頼の謝礼の金が!」

名探偵が苛立ちとともに壁を叩く。
そう名探偵と呼ばれようと金が欲しいのだ。

だが少年探偵は純粋に宝を見つける事だけを考えた。
だから『それ』は協力した。
古い屋敷に隠れ住む妖精が――。



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