夢物語

二○××年――
　賢明にして常に進歩を求める我ら人類は、従来各種スポーツ大会において、男性のみ、女性のみに別れて競技してきたが、新たに無性別部門を設けることを義務化した。国際社会がこの英断に踏み切ったのは、某競技の女子選手２名が、男性の大会に参加できないのは不当な差別であると訴えたことがきっかけである。今後はオリンピックから小学校の運動会まで、あらゆる大会で男性の部、女性の部、無性別の部と別れて競技が実施されることになる。

×十年後――
　賢明にして常に進歩をやめぬ我ら人類は、各種スポーツ大会において、女性・男性・無性別に分かれて実施してきた競技を、無性別部門一つに統一することにした。これは真の優勝者を決めるのに、性別を考慮に入れる必要はないと、各種の国際的競技団体が相次いで見直しをおこなった結果である。今後はオリンピックから小学校の運動会まで、あらゆる種目で女男分け隔てなく 競技が実施されることになる。

さらに×十年後――
　過ちを改めることにためらわぬ我ら人類は、賢明にも従来は性を区別せず争ってきた各種スポーツにおいて、女性と男性に別れて競技を行うことにした。某競技団体が低迷する人気を挽回することを目論んで、国際規約に反して女性男性に分けて大会を実施し、その後追随する団体が後を絶たないためである。今後は中断されているオリンピックを含め、各種の国際大会から中学校の運動会までこの方法がとられる見通しである。（なお、小学校では発達段階から、女性の優勝者の方が多い現況を踏まえ、無性別のままで実施される）