第1話

文字数 1,228文字

「それでも愛してるって、どうして言えるのですか。」
もしあなたがいきなりこんなことを聞かれたら、どうやって答えるのだろうか。
 これは先週、カウンセラーが私に聞いた言葉だ。
 「愛に理由なんている?」なんてそんな難しい話題でも定義をつけたい訳でもない。
 私の答えはこうだった…
「個体としての彼の存在はとても愛しています。でも心は麻痺してしまっているので全くわかりません。」

 いきなり冒頭から「愛」の定義なんて読まされたらびっくりしてしまうよね。
私の名前は、中村ユウ。激越性うつ病とやらで、カウンセリングに通う中年男性。
えっ?「彼の個体を愛してる…」って、ゲイ?バイ?って、思ったことだろう。これもまた私の一部をややこしくしていて、身体としては男だけど実際にゲイでもバイでもトランスセクシャルでも、ましてやストレートでもない。でも白人男性のパートナーはいるし、二人で2匹の犬も飼っている。
いつも思うのは、どうして世の中ってやつはカテゴライズしたがり、その逆の側は知りたがりになるのだろう。またマイノリティは声を大きくしてどのぐらい叫び続けなければいけないのだろう。なんてどんなことでも堅苦しく考えてしまう面倒な思考を四六時中もつ私である。
まあとにかく、私は僕であり、俺であり、アタシであり、私であるのだ。それが私の性別。この話は別の機会にかいてみるかな。

 とにかく「激越性うつ病患者の闘病記」そんなことを書くつもりはないし、実際に自殺したいとかってこともないのだから、決して重く暗く辛い話ではない。
 ここまで読んで、えっ?十分重いよ…って思ったそこのあなた。あなたが少しだけ私に興味を持ってもらえるようにポジティブ面だけを書くと、
僕はミュージシャンで、ヨーロッパに住んでいる。家族は白人男性と犬が二匹。購入したマンション、車2台、バイク2台、自転車2台、簡易なログハウスがついた庭も所有している。めっちゃ金持ち?なんて思った方もいるかもしれないが、旦那がビジネスマンで毎月2人と二匹が暮らすには十分な収入はある。しかし贅沢できるお金はない。ただ子どもはいなし、四六時中仕事をしているから時間もない。お金を使う場所がないかは、物には満たされている。しごく普通な家庭なのかな。

 どうだろうか、ちょっとは私に興味が湧いたかな。
 まあそんな私がなぜ激越性うつ病になり、ここに来てなぜ自分の人生を振り返ろうと思ったのか、そしてわざわざ日本を離れてヨーロッパで暮らすようになったかなんてことを書いていきたい。
でも最初に一つだけ…実家はお金持ちで、私は英才教育を受けて育ち、ミュージシャンになったのでも英語を流暢に使って欧州で暮らしている訳ではない。

 私の両親は、うーむ…言葉を選んで書くと、父は反社会的勢力に近い人。近い人?。母は下町のお水(水商売)だった。アル中のママ?。
だからこそこんな変な私が今存在している。
またとにかく一つ一つを紐解くように、過去のことを書いてみよう。
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