帰らぬ人

文字数 256文字

市民プールの
波をかき分けて
あの人の声
目立つ
大きな体で
大きな笑い声だ

競馬が好きだった
お酒が好きだった
孫がいたはずで
でも嫁はいなかった
彼は
いつも歩いていた
水の中を
誰にでも隔たりなく
挨拶をしながら

いつだったか
ご飯に行こうと
約束をしたのだけど
それは反故になった
彼は帰らぬ人に
噂話
信じられなくて
実際に
それが事実だと聞いたときにも
信じられなかった

当たり前の
人は死ぬという感覚を
違和感だと思うのなら
きっと僕は余りにもちっぽけだと思う

水際に
太陽が反射して
キラキラと光る
その光景を前に
たまに思い出す
あの笑い声を
流れ去ってからもなお
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