潮騒に花火
文字数 248文字
盆踊りの太鼓が遠い。
「もうすぐ、」女は寂しげに、「夏も終わりよね」
風に残夏。
「また、」男の声に迷いが混じる。「来るよ」
地に宵。
「また来年?」女が口を尖らせる。
耳に潮騒。
「……来月にも……」男の声が先細り。
麦茶が香る。
「え?」女の顔に意外の色。
肌に焼け色が名残を刻み。
「……その……」男がうつむき、
頬に予感が朱の色。
「ね、」女が男の耳へと寄せて、「聞かせて」
風鈴の音。
「……来月にも!」男が思い切れば。「君を、迎えに来たいんだ」
空に大輪、咲く花火。
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