3 文明論とSDGs

文字数 1,833文字

では、以上のような文明論の4つの政策分類が、
SDGsの5つの要素とどうつながっているのか、
現実の文明課題とも結びつけながら、
考えてみたいと思います。

人類は今、〝作って分けて、上げたら活かす〟という、
4種類の政策全てにおいて、課題に直面しています。
それは地球環境の限界、経済・社会活動の複雑加速化、
健康水準の低下、政策の巨大化と分権化の要請です。

まず、地球環境の限界はもちろん、
技術的政策における、資源・環境問題につながります。
限られた環境の中で、枯渇性の資源や、
環境内の他資源を損うような資源を使っていると、
文明の発展が続けられないということです。

また、文明発展による経済・社会活動の複雑加速化は、
景気過熱(バブル)や不況、格差拡大の危険を生じ、
経済・社会政策における再投資と再分配の両立、
いわば次の収穫のための種籾(たねもみ)と、皆で分ける食用米(しょくようまい)の、
均衡(バランス)の確保を難しくしています。

さらに、生活や医療水準の向上は逆に、
経年・経代的な健康水準の低下をもたらしており、
そこには社会的健康の問題として、腐敗や衆愚化、
組織の蛸壺(たこつぼ)化、教育の困難化も含まれるとすれば、
保健と教育双方に関わる、人的資源政策の問題を生んでいます。

加えて、経済・社会活動の拡大や複雑加速化は、
必要とあれば大勢が動くが、その際は様々な人々の、
知恵や能力を活かす政策も必要とさせます。
すなわち国際化と民主化や官業開放、人権保障のように、
政策の巨大化と分権化を同時進行させる必要性という、
行政管理政策の課題も生じています。

実を言えば、広い世界で多くの国々が争う時代には、
別の意味で文明の持続可能性が得られたのかもしれません。
資源不足や格差拡大が起きたら植民地開拓や戦争が行われ、
そこでは私のような虚弱者や遅れた制度も淘汰(とうた)されました。

しかし今では地球は限界、世界もまとまり、
災害や戦争などの淘汰による犠牲や費用、危険は大きすぎ、
〝作って分けて、上げたら活かす〟4つの政策全てにおいて、
本質的な持続可能性が求められます。

そしてまた一方、AIを初め、新素材・エネルギー、
IoTとビッグデータ処理、知能ロボット、
生物工学(バイオテクノロジー)生体工学(バイオニクス)、先進医療・教育など、
それを可能にする新技術も現れつつあります。




政策を生み出すのは、必要性(社会需要)と
可能性(許容性)であるともいわれます。
そこで〝持続可能性(サステナビリティー)〟が鍵言葉(キーワード)となるような、
世界的総合政策が考えられるようになったのだと思います。

では本当に、以上の文明論による政策分類で、
SDGsの体系も説明できるのでしょうか?

Planet(地球)=環境の持続可能性は、
富を生み出す技術の、健全な開発・普及のための技術的政策。
Prosperity(繁栄)=経済の持続可能性は、
富の再投資に関わる分配のための、経済政策。
People(人々)=社会の持続可能性は、
富の再分配と人的資源確保のための、社会政策と人的資源政策。
Peace(平和)とPartnership(協働)
=政策の持続可能性は、
政策の企画・実施のための行政管理政策に対応します。

SDGsの5つの要素、5Ps(ファイブピーズ)もまた、
文明論の4つの政策に対応しているといえます。

5Psでは社会政策が経済政策と切り離されて、
人的資源政策とまとめられていますが、
両者は元々関係が深いので、保健福祉政策のように、
実務的には結びつけられることが多いです。

5Psでは行政管理政策において、
2つの要素があげられていますが、
これはまさに、行政管理政策における、
政策の巨大化と分権化に対応します。

ただし、この文明論や国内行政実務では、
犯罪対策が技術的政策に含まれるのですが、
SDGsではPeople(社会・人的資源政策)か、
Peace(行政管理政策)に含まれます。

しかし元々、政策分類には重複するところもあり、
進歩的な国際政策であるSDGsにおいては、
人間が持つふたつの側面のうち、
防犯技術の対象となる〝内なる自然〟という側面よりも、
人的資源や政策主体としての側面を重視しているのだ、
と解釈できると思います。

以上から、私的文明論による
〝作って分けて、上げたら活かす〟という政策分類から、
〝環境、経済、(人間含む)社会、政策〟の持続をめざす、
国際政策SDGsを説明できるものと考えます。

〝文明の星〟理論は、
様々な小説や漫画、アニメ、動画などに触発されて、
SF『Lucifer(ルシファー)』シリーズを書く中で、
考えることができました。
素敵な刺激や感動を与えてくれた文化的作品に、感謝します。
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