第1話 

文字数 427文字

「そういえば今日、壮の誕生日だよね」

昼休みの終わる5分前、筒井さんが友達と話すのをやめて突然隣の席の僕に話しかけてきた。
えっ、と驚いて小説から顔を上げる。僕の誕生日なんて誰も覚えていないと思っていたのに。
「壮くん誕生日なの?おめでとー」
「まじ?ハピバじゃーん!」
彼女の友達にまで祝福されてしまった。顔がだんだん茹っていくのが分かった。女子に誕生日を祝ってもらったのはいつ以来だったか。小学校のお誕生会で手作りの被り物を被らされた、あの時が最後のような気がする。
「ありがとう。でもなんでわかったの?」
筒井さんはきれいな顔をしている。きれいな顔が僕を見ていることが無性に恥ずかしくて、目を合わせられない。
「ほら、黒板の横のカレンダー。」
彼女が指をさしたのはクラスの予定がすべて書き込まれた予定表だった。
「壮の名前、今日の日付のところにあったけど、違った?」
「合ってる、ありがとう。」
「うん。お誕生日おめでとう。」
僕は少しだけこの世界の主人公になった気がした。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み