第1話
文字数 1,342文字
居間のテーブルの上に古いアルバムが置いてあった。誰のだろうと思いながら中を見ると、お父さんのアルバムだった。赤ん坊の頃からページをめくるたびに成長していく。
「あ、おじいちゃんとおばあちゃんだ」
写真の中のおじいちゃんとおばあちゃんは、私が知っている二人よりずっと若い姿だった。
「当たり前か」
二人の顔を見て小学生の時、初めてお盆に田舎に行った時のことを思い出した。
そこには、子供がいっぱいいて驚いた。先に到着していたお父さんのお姉さんの子供やお兄さんの子供だということをその時聞いた。どうやらいとこというらしく、新しい言葉を覚えて一つ偉くなったような気がしてうれしかった。
ご先祖様のお墓に行き、仏壇にも手を合わせた。トランプの遊び方をおじいちゃんが教えてくれた。
覚えたてで年上のいとこたちとまともに遊べるわけもなく、私はおじいちゃんと二人組で遊び、連勝した。いとこたちも加減してくれていたのだと思う。そんな時、おばあちゃんは、少し離れたところでみんなが遊ぶのを眺めていた。
おばあちゃんは、無口な人だった。気がつくと、台所で何か料理をしていたり、縁側でうとうとしていた。
そんなおばあちゃんを夕方、じっと眺めていると、目と目が合った。おばあちゃんは、驚いた顔をしたかと思うと、庭に出て地面を指差した。外で一緒に遊ぼうと言うことだろうと思い、首を横に振った。お兄ちゃんたちとかくれんぼをした後で疲れていたから。
それから、子供の頃は、毎年のようにお盆に田舎に帰っていた。そう、あれは小学校の5年生の夏。田舎に帰ったら、おばあちゃんがいなかった。
死んだ?
直前に見ていたドラマで、そんなシーンがあった。ドラマでは、女の人が、いなくなった人を探していて、その家の人に聞いた。あの人がいないと、どこに行ったのかと。
するとその人が、ボソリと死にましたと言った。女の人は、たしか、それは知らないこととはいえ、ごめんなさいと謝っていた。謝っていたのだから、死んだ人の所在を聞いてはいけないのだーそう思った。だから、おばあちゃんのことは聞かなかった。その後もずっとおばあちゃんはいなかったので、やはり死んだのだと確信した。
そんな昔のことを思い出しながら、ページをめくっていた。
「ああ、ちょっと部屋の掃除をしてたら出てきたんで、見てたんだ」
お父さんの声がしたと思ったら正面に座った。
「おじいちゃんとおばあちゃん、懐かしいね」
私の言葉にお父さんは返事もせずに私の顔を眺めていた。
おじいちゃんは、3年前に亡くなり、田舎の家は古民家好きの人が買い取ってリフォームしてするでいるらしい。
庭を素敵だと言っているらしく、あの頃のままだそうだ。
「お前、おばあちゃんって?」
「ん?」
「おばあちゃんは、お前が生まれる前に行方不明になったままだぞ」
「やだな、お父さん、夏だからってそんな怖い話。嘘でしょ。小学校4年生まで、いつもお盆にいたよ。行くたびに何回も庭で地面を指差して、外で遊ぼって言うの。私が疲れてる時ばっかりだったから、外に行かなかったけど」
「嘘じゃないよ。庭で地面を指差していた? そう言えば、おじいちゃん、死ぬ前に、『ばあさん、すまん、わしが悪かった』っていつもうなされていた……」
了
「あ、おじいちゃんとおばあちゃんだ」
写真の中のおじいちゃんとおばあちゃんは、私が知っている二人よりずっと若い姿だった。
「当たり前か」
二人の顔を見て小学生の時、初めてお盆に田舎に行った時のことを思い出した。
そこには、子供がいっぱいいて驚いた。先に到着していたお父さんのお姉さんの子供やお兄さんの子供だということをその時聞いた。どうやらいとこというらしく、新しい言葉を覚えて一つ偉くなったような気がしてうれしかった。
ご先祖様のお墓に行き、仏壇にも手を合わせた。トランプの遊び方をおじいちゃんが教えてくれた。
覚えたてで年上のいとこたちとまともに遊べるわけもなく、私はおじいちゃんと二人組で遊び、連勝した。いとこたちも加減してくれていたのだと思う。そんな時、おばあちゃんは、少し離れたところでみんなが遊ぶのを眺めていた。
おばあちゃんは、無口な人だった。気がつくと、台所で何か料理をしていたり、縁側でうとうとしていた。
そんなおばあちゃんを夕方、じっと眺めていると、目と目が合った。おばあちゃんは、驚いた顔をしたかと思うと、庭に出て地面を指差した。外で一緒に遊ぼうと言うことだろうと思い、首を横に振った。お兄ちゃんたちとかくれんぼをした後で疲れていたから。
それから、子供の頃は、毎年のようにお盆に田舎に帰っていた。そう、あれは小学校の5年生の夏。田舎に帰ったら、おばあちゃんがいなかった。
死んだ?
直前に見ていたドラマで、そんなシーンがあった。ドラマでは、女の人が、いなくなった人を探していて、その家の人に聞いた。あの人がいないと、どこに行ったのかと。
するとその人が、ボソリと死にましたと言った。女の人は、たしか、それは知らないこととはいえ、ごめんなさいと謝っていた。謝っていたのだから、死んだ人の所在を聞いてはいけないのだーそう思った。だから、おばあちゃんのことは聞かなかった。その後もずっとおばあちゃんはいなかったので、やはり死んだのだと確信した。
そんな昔のことを思い出しながら、ページをめくっていた。
「ああ、ちょっと部屋の掃除をしてたら出てきたんで、見てたんだ」
お父さんの声がしたと思ったら正面に座った。
「おじいちゃんとおばあちゃん、懐かしいね」
私の言葉にお父さんは返事もせずに私の顔を眺めていた。
おじいちゃんは、3年前に亡くなり、田舎の家は古民家好きの人が買い取ってリフォームしてするでいるらしい。
庭を素敵だと言っているらしく、あの頃のままだそうだ。
「お前、おばあちゃんって?」
「ん?」
「おばあちゃんは、お前が生まれる前に行方不明になったままだぞ」
「やだな、お父さん、夏だからってそんな怖い話。嘘でしょ。小学校4年生まで、いつもお盆にいたよ。行くたびに何回も庭で地面を指差して、外で遊ぼって言うの。私が疲れてる時ばっかりだったから、外に行かなかったけど」
「嘘じゃないよ。庭で地面を指差していた? そう言えば、おじいちゃん、死ぬ前に、『ばあさん、すまん、わしが悪かった』っていつもうなされていた……」
了