SIDE-R(Congratulation)

文字数 715文字

 ショッピングモールから駅に向かう間、俺とリリ子さんは並んで歩きながら一言も言葉を交わさなかった。

 そりゃそうだ……実は相手の秘密を知っていることを、お互いに隠していたんだから何から話せば良いか解らないよな。

 気付かれないように隣を横目で見ると、同じように俺を見たリリ子さんと目が合った。気まずそうなリリ子さんに俺は、いつもの笑顔で安心感を与える。

 これから俺とリリ子さんの関係は、どうなっていくんだろう?

 リリ子さんは「一緒に苦しんで、一緒に前を向けるように頑張ろう」と言った俺の言葉を守り、自分から離れることはないと確信できた。

 でもそれはリリ子さんにとって、長く辛い時間を意味する。

 解ってるのかな? 本当の地獄は、これから始まるんだってことを……。

 電車のホームから落ちたときも、屋上駐車場の塀に上ったときも、リリ子さんが死ななくて本当に良かった。

 だってリリ子さんだけ楽になるなんて、許されないでしょ?

 リリ子さんが恋人になったら、タイミングを見て進藤凛々子と解っていたことを暴露するつもりだった。セナさんの事件のおかげで状況は変わったけれど、目的は変わらない。

 暗く冷たい牢獄に閉じ込めたリリ子さんに、もう隠す必要のない姉ちゃんの話を、たくさんしてあげるよ。

 リリ子さんが傷付いて血塗れになるまで優しくゆっくり言葉の刃で抉ってから最後に、姉ちゃんが纏った綺麗な深紅のドレスを着せてあげよう。

 駅に着いて、俺はリリ子さんが上り方向の電車に乗るのを見届け明るい笑顔で手を振った。リリ子さんも、少し遠慮がちに手を振り返す。



 さぁ……楽しくなってきた。





終わり
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