第1話

文字数 1,410文字

 あるところに、たくさんのばらのはながさいている、ばらおうこくがありました。
 ばらおうこくには、それはそれはうつくしい、ななにんのおひめさまたちがいます。
 おひめさまたちのかみのいろは、ばらのはなとおなじように、それぞれちがっていました。
 いちばんうえのおひめさまは、もえるようにあかいかみの、ゆうかんな「あかばらひめ」。
 いちばんしたのおひめさまは、つやのあるくろかみの、あいらしい「くろばらひめ」。
 おひめさまたちは、みんなやさしく、ばらおうこくのひとや、いきものたちを、とてもたいせつにおもっていました。

 おひめさまたちのなかで、くろばらひめだけは、からだにたくさんのトゲが、はえていました。
 からだにはえたトゲのせいで、くろばらひめは、だいすきなおねえさまたちと、てをつなぐこともできません。
 くろばらひめがふれてしまえば、たちまち、きずつけてしまうからです。

 くろばらひめは、からだのトゲをぬくほうほうを、いつもさがしていました。
「おもいっきりひっぱってみたら、どうかしら」
 あるときは、からだのトゲを、うーんうーんと、ひっぱります。それでも、トゲはぬけません。
「ナイフできってみたら、どうかしら」
 またあるときは、トゲをナイフできってみました。けれど、トゲは、すぐに、またのびてしまいます。

 あるひ、くろばらひめが、もりにいくと、ピンクのかみの、かわいいおんなのこがいました。
「あなたは、だれ?」
「わたしは、チューリップおうこくの、ピンクひめです」
 おんなのこは、ばらおうこくの、となりのくにのおひめさまでした。
 くろばらひめは、はじめて、ちがうくにのひとにあいましたが、すぐに、ピンクひめと、なかよくなりました。
 
 くろばらひめは、おしろにかえると、おうさまに、ピンクひめとあったことを、はなしました。
 すると、おうさまは、かおをまっかにして、こういったのです。
「チューリップおうこくのものとは、あってはいけない!」
「まあ、どうして?」
「チューリップおうこくのものは、わるいにんげんばかりだからだ」
 おうさまはそういいましたが、くろばらひめは、ピンクひめが、わるいにんげんだとは、おもえませんでした。
「チューリップおうこくにも、いいひとは、たくさんいますわ」
 くろばらひめがそういうと、おうさまはおこりました。
 そして、くろばらひめのトゲは、ながく、ふとくなってしまいました。

 ばらおうこくのおうさまと、チューリップおうこくのおうさまは、とてもなかよしでしたが、あるとき、けんかをしてしまいました。
 それから、おうさまは、チューリップおうこくが、だいきらいになってしまったのです。

 くろばらひめは、チューリップおうこくにも、いいひとがいることを、おうさまになんども、なんども、はなしました。
 おうさまは、はなしをきいてくれませんでしたが、くろばらひめは、くりかえし、はなしをしました。

 あるひ、くろばらひめが、おうさまのところにいくと、そこには、ピンクひめと、チューリップおうこくのおうさまがいました。
 くろばらひめにあうために、ピンクひめが、つれてきてくれたのです。
「あのときは、わるかった」
 おうさまたちは、どうじに、そういいました。
 そのとき、くろばらひめのトゲが、みんなぬけてしまったのです。
 それから、ばらおうこくのひとも、チューリップおうこくのひとも、みんななかよく、しあわせに、くらしました。
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