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ねえ、グラビティーヌ。あなたは、私の家の目の前の、その通りを一人で歩いていたね。
ねえ、グラビティーヌ。そして、あなたは飛び降りようとしてる私に気づいたんだよね。
ねえ、グラビティーヌ。でも、私はあの時。本当は飛び降りる勇気なんて無かったんだ。

きっと、あなたは。そんな私の事を、その通りから、一目みただけで理解したんだよね。
きっと、あなたは。私の心の中にある、色々な物の重さを把握する事ができたんだよね。
きっと、あなたは。そんな私の暗く深い心の中を覗いて、触れて。疲れてしまったよね。

ねえ、グラビティーヌ。あなたは、そんな私の事を見透かすような目でほほ笑んだよね。
ねえ、グラビティーヌ。嬉しかったんだ。ひさびさに見た心の底からの笑顔だったから。
ねえ、グラビティーヌ。私は、足を滑らせたんだ。真っ逆さまに飛び降りちゃったんだ。

でも、あなたは。真っ逆さまに落ちてく私を止めてくれた。魔法みたいに止めてくれた。
でも、あなたは。止めただけじゃなくて、時間を戻したみたいに、私をもとの場所まで。
でも、あなたは。ちっとも驚いたような顔ひとつせずに。変わらずほほ笑んでくれてた。

ねえ、グラビティーヌ。それから、あなたは、まるで何も起こらなかったと言うように。
ねえ、グラビティーヌ。何ひとつ変わらない足取りで、夕暮れの街へ消えていったよね。
ねえ、グラビティーヌ。あれから私は飛び降りようとしたりしてないよ。今は幸せだよ。

きっと、あなたは。あの、不幸せだった私の事を覚えてるのかな。覚えてもいないよね。
きっと、あなたは。あの時の私みたいな人を、探して、見つけて、救っているんだよね。
きっと、あなたは。今もどこかで、消え入りたいと思ってる人たちを見つめているんだ。

ねえ、グラビティーヌ。本当はありがとうと言いたかったんだ。言えなかったけれどね。
ねえ、グラビティーヌ。足がガクガク震えて、あなたを見送るだけで精一杯だったんだ。
ねえ、グラビティーヌ。ありがとう。本当に、本当にありがとう。私を、救ってくれて。

ねえ、グラビティーヌ。