第1話

文字数 1,727文字

King Gnu(キングヌー)の良さを知ってから約一年たつ。
彼らが人気バンドとなった理由は、実力はもちろんだが、その他にも様々な要因が挙げられるだろう。

・J-POPとブラックミュージックの絶妙な融合
・常田大希という天才による作詞作曲、井口理の稀有な歌声
・SNSやラジオでのメンバーへの親しみやすさ
などなど

しかし、King Gnuの人気――この真の理由に私は気がついてしまった。
「King Gnuが、サザエさんと似ているから」である。

「えっ!? King Gnuの中にカツオや波平なんか・・・いないよ」
と、M-1グランプリ2020決勝でウエストランドの井口が言っていた”いないよ”というフレーズを頭に浮かべた方は一人もいないと思うが、これは井口違い。

以下、King Gnuの楽曲ごとにサザエさんとの共通事項を述べていく。

■白日
2019年の紅白歌合戦でも披露された、King Gnuの代表曲である。
私はバラードロックだと思っているのだが――いま書いていて、My Chemical RomanceのWelcome To The Black Paredeを思い出した。どちらもイントロがしんみりな歌声で、サビのノリが良いからか――白日の冒頭の歌詞に注目してほしい。

『時にはだれかを 知らず知らずのうちに 傷つけてしまったり
失ったりして初めて 犯した罪を知る』
まるで懺悔のような言葉が、ボーカル井口の透き通った声で届けられる。

注目してほしいのは、時には~♪の歌詞である。
そう、サザエさんにもあるのだ。時には、が。

「あかるいサザエさん」より
『ときには しくじることもあり
ちょっぴり 悲しいときもある』
(ちなみにこの後は『だけど~ ウーン だけど~♪』と続く)

似てる! かつてサザエさんが火曜日も放送していたころのエンディング曲が、まさかKing Gnuに通じていたなんて。しかも、どちらの歌詞の内容も反省や悔悟の念を感じさせる。
(ときには〇〇であり、〇〇である。という言い方だから、似るのは当然でしょというツッコミは無視させていただく)

■Teenager Forever
サビに入る前の歌詞に注目してほしい。
それまで歌っていた井口から、ボーカルが常田にバトンタッチする部分である。

『いつまでも 相変わらず つまらない話を
つまらない中に どこまでも 幸せを探すよ』

これって・・・サザエさんの核心に触れてるではないか!
カツオの悪だくみとか、磯野家に問題を持ってくるノリスケとか、花沢さんのダミ声とか。
(公式サイトのキャラクター紹介を見ると、花沢さんの欄には「将来の夢はカツオのお嫁さんです。」とある。小学生から具体的な夢があるって、いいじゃあないか)
どうでもいいつまらない話、些細なことなのに、見ていてどこか幸せを感じてしまう。
いや、日曜日の夜という時間、私たちはサザエさんを見て、明日からの一週間に向けて幸せを探さざるを得なくなっている。

■飛行艇
サビの最後の部分。この曲で最も強く残るフレーズがある。
『命揺らせ 命揺らせ』

ここまで読んでくださった方なら、サザエさんとの共通点は既におわかりだと思うが、あえて書く。
サザエさんのエンディングアニメーションを思い出してもらいたい。
「サザエさん一家」が流れるエンディングのラスト、サザエさんを先頭に一家が一列になって右から左へリズムよく進んでいく。みんなが同じように腕をふり進んでいくと、やがて彼らの絵は影になり、行く手に大きな家が現れる。
元気よく走ってきた一家は勢いを増し、さらに加速してサザエさんから順にその家へ飛び込んでいく。
注目は彼/彼女らが突入した家の揺れ方だ。左・上・右へ大きく歪むような動きを見せながら、家が大きく揺れる。
まさに(命)揺らせ~♪(命)揺らせ~♪である。

12月に発売されたKing Gnuの両A面シングル「三文小説 / 千両役者」(並ぶことを意識した2つのタイトルが良い)、YouTubeを確認すると2021年1月6日時点で両曲あわせて2,800万回以上の再生となっている。
一方のサザエさんは、昔からずっと高視聴率を保ち続けている。

人気を獲得するということには、どこか共通した点があるのかもしれない。
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