第2話

文字数 855文字

【時刻表にない運転】
そして、数日後。
僕らはいつものバス停に三人揃って立っていた。
時間は6時30分・・・・・もちろん時刻表にないバスに乗るために。
「おい、浩二。本当に来るのかよ」
僕と哲也は、いまだに半信半疑だ・・・
しかし、その数分後には、浩二の話を信じない訳にはいかなくなった。
いつものように砂煙を舞い上げながら6時30分のバスがこちらにやって来る
お互い声も出ず顔を見合わせる三人。その後、開いたバスの扉の中に吸い込まれるよう乗り込み、誰もいない一番後ろの席に腰を下ろす。
沈黙の後、いつものように最初に口を開くのは浩二だ。「どこまで行くつもり?」
「とりあえず、何処に行くのか確かめようー」今日の哲也は冷静だ。
「おれ、高校生になったら、バイクの免許を取るよ。」
「突然どうしたんだよ。」
「そうしたら、今まで行けなかった所までひとりで行けるし、バスよりもっと遠くまで行って、この街の外までで行くんだ。もっともっと知らない世界を見に行ってみたい。」
「すげえーなぁー哲也らしいよ」
僕は感心しながら、あるいは羨ましくも思いながら、窓の外の野草のシロツメ草が茂る白い世界に目を向けていた。
幾つかのバス停に止まり、その都度人が乗り込んで来るが、座席にはまだまだ余裕がある。
「裕一郎は受験どうするの・・・・?」浩二が問いかけて来た。
「多分、父さんがまた転勤になると思う・・・」
「え、また転校するの」二人の声が揃う。
哲也は不服そうに「この前転校して来たばかりじゃないか!」
「まだ、決まりじゃないけど、多分間違いないみたい。今までずっと
こんな感じなんだ。だから友達が出来てもすぐ転校・・・・」
「それ微妙・・・」哲也は寂しそうな視線を浩二に送りながら・・
「お前は、やっぱり外の高校を受験するんだろう・・・」
哲也の言う外とは、県外の高校を指しているのだろう。
浩二と哲也は、今まで幼い頃からずっと一緒で中学まで来た。
「うん、多分。」
「中学を卒業したら今みたいに会えなくなるな・・・」
その哲也の言葉に誰も続くこともなく、三人の沈黙が続く・・・


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