亡骸

文字数 356文字

無数の穴に囲まれた蛇が右往左往している
まだマシな穴のそばを通ろうとして体半分を穴の中へ垂らしてしまい
それでも穴の先へ向かおうともがいている
しかしやがて疲労がピークへと達したのか
穴と穴の細い隙間で動かなくなってしまった
決して死んではいないけれど
それまでの勇敢さと機敏さは失われて
ただちょろちょろと舌を出すだけの存在となってしまった
最初は悲しそうに空と穴の向こうを眺めていた蛇も
やがては惨めさを鱗の間から滲ませて目を閉じた
穴と穴の間の居心地の良さを嘯いて
きっといずれ朝日に焼かれて骨と皮とになり果てるでしょう
蛇はずっと思っていました
これらの穴を超えれば何かへ至れるのだと
こんな穴だらけの地面はなんて恨めしいと
これだけ体をくねらせているのだからと
蛇はそう思いながら小さく干からびていきました
それはそれは小さな亡骸でした
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