箴言30章28節

文字数 1,094文字

「好きな聖書の言葉は?」
これは、教会コミュニティでよく聞かれる質問だ。
有名なイエスの言葉、詩編の祈りなど、人気の言葉を選ぶ人が多い。

しかし、わたしは小学生の時、好きな物が被ったクラスメイト女子に
「あんな子なんかと好きな物が被るなんて嫌だぁ!」と目の前で号泣されたのが
トラウマになっていて、人と好きな物が重なるのが怖い。好きな聖書箇所もだ。

わたしはこの数年、好きな聖書の言葉は箴言30章28節だと答えている。
今のところ、「私も。好きな言葉は箴言30章だよ」と言われたことはない。

箴言30章には「この生き物に学びなさい。かっこいいよ、すごいよ」と生き物が4つ
挙げられる。4つ目に登場するのが「王宮に住むヤモリ」だ。最初の3つの生き物は、
動物としての習性が素晴らしいと語られている。しかし、ヤモリは違う。

「手で捕まえられてしまうやもり/だがそれは王の宮殿にいる。」(聖書協会共同訳)

わたしは、この言葉は聖書のユーモアではないかと思う。
王宮は権威的な場所だ。特別な人間しか入る事が許されない。
けれども、小さなヤモリは簡単に入り込み、しかも王宮に住んでいるというのだ。
人間がどんなに国境を定め、一部の人間を追い出し、土地や場所を所有したところで
神様が創造された小さな生き物たちは簡単に入っていく。王宮でウンコをする。

ヤモリの中には鳴く種類もいるらしい。
人間に捕まってキキキキ!と鳴くヤモリの動画を見たことがある。
夜、ヤモリの鳴き声がうるさくて眠れない、ということもあるらしい。

また、家の中にヤモリが大量に入り込み、困っているという記事も読んだことがある。
沖縄のエアコンには「ヤモリガード」なる機能がついているものがある。
なぜなら、エアコン内にヤモリが入り込み、電子基盤をショートさせる故障が多いから。
その時、ヤモリは感電死するわけで、そんな姿を見るのもショックだ。
夜は鳴く、何匹も家に入ってくる、ウンコをたくさんする。これがヤモリだ。
箴言30章に出てくるヤモリも「王宮に住む、お上品なペットのヤモリ」ではなく、
ごくごく普通の、家の中に入り込み、キキキと鳴き、部屋の中にフンを落とすタイプの
ヤモリだろう。

 「わたしは王宮に住むやもりになりたいです」、聖書的でかっこいい。
社会で声が大きく力を持つ人間がどんなに世界を支配したと人間の力を誇っていても、
わたしはヤモリのように「そんなことないよ」と笑うことができる人になりたい。
「あっちにいけ!」と簡単に捕まって外に放り出されてしまいような、小さな存在だけど、
王様の宮殿だろうと関係なしに、神様が創造された地球の中で、堂々と生きるヤモリの姿は
勇気を与える。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み