歌物語【式を解く…】
文字数 703文字
「X=3だから…これをこっちの式に代入すると……あれ?なぜにこんなに数字が大きくなるの?」
しばらくじっと数式を見てみる。
特に間違いをしているところはないように見える。でも、解けてない。
「……」
大きくため息をついて、答えを見てみる。
「…あーぁ」
簡単な掛け算のミス。七の段はいまだに間違う。
シャープペンを放り出し、そのまま後ろに倒れこむ。
お日様の匂いがふわりと広がり、景色が天井に変わった。
「成長して、ないなぁ…あたし」
そのままもぞもぞと布団にもぐりこむ。
「…ぬっくい」
「…――?」
肩の辺りの寒さで目が覚めた。
「―あぁ…ねちゃったんだ…」
カーテンが鼻の先で揺れている。
そういえば、窓を開けたままだった。
ゆったりと頬を流れる空気に混じるちょっぴりの冷たさに夏の終わりを感じる。
そして耳を澄ませば、深い闇の中から渡ってくる音。
「……銀河鉄道…」
そうつぶやいた自分が照れくさくて想わず微笑んでしまった。
まだ、あたしが小さかった頃だ。
静かになると聞こえる闇からの音にあたしはひどく怯えた。
なんだか分からなくて、それでも恐くて泣いていたっけ。
泣きじゃくるあたしを、やさしく抱きしめて
「あれはね、汽車がお空を走っていく音なんだよ」
と教えてくれた母の胸のぬくもりをあたしは今でも忘れない。
枕もとの時計を見ると、十時ちょっと過ぎ。
「…お茶はいったよ。降りといで」
階下から母の呼ぶ声がする。
「うん、いまいくー」
あたしは起き上がると、手を伸ばしゆっくりと窓を閉めた。
式を解く
少女夜更けの
風の音
しばらくじっと数式を見てみる。
特に間違いをしているところはないように見える。でも、解けてない。
「……」
大きくため息をついて、答えを見てみる。
「…あーぁ」
簡単な掛け算のミス。七の段はいまだに間違う。
シャープペンを放り出し、そのまま後ろに倒れこむ。
お日様の匂いがふわりと広がり、景色が天井に変わった。
「成長して、ないなぁ…あたし」
そのままもぞもぞと布団にもぐりこむ。
「…ぬっくい」
「…――?」
肩の辺りの寒さで目が覚めた。
「―あぁ…ねちゃったんだ…」
カーテンが鼻の先で揺れている。
そういえば、窓を開けたままだった。
ゆったりと頬を流れる空気に混じるちょっぴりの冷たさに夏の終わりを感じる。
そして耳を澄ませば、深い闇の中から渡ってくる音。
「……銀河鉄道…」
そうつぶやいた自分が照れくさくて想わず微笑んでしまった。
まだ、あたしが小さかった頃だ。
静かになると聞こえる闇からの音にあたしはひどく怯えた。
なんだか分からなくて、それでも恐くて泣いていたっけ。
泣きじゃくるあたしを、やさしく抱きしめて
「あれはね、汽車がお空を走っていく音なんだよ」
と教えてくれた母の胸のぬくもりをあたしは今でも忘れない。
枕もとの時計を見ると、十時ちょっと過ぎ。
「…お茶はいったよ。降りといで」
階下から母の呼ぶ声がする。
「うん、いまいくー」
あたしは起き上がると、手を伸ばしゆっくりと窓を閉めた。
式を解く
少女夜更けの
風の音