第1話

文字数 816文字

突然の喉の痛み。
発熱。

以前の私であれば、(風邪気味かなぁ…)と、
うがいして、布団を多めに引っ被って寝る。
そして、時が解決してくれるだろう、と。

しかし、このご時世、仮に「風邪」であっても、
うっかり他人様にでもうつそうものなら、世間から
後ろ指さされかねない状況。

自己判断で「風邪」と命名するのはヤメにして、
プロに名付けてもらうことにした。

さて、いざ病院とはいっても、風邪などで訪れたことは
ないので、何科に行ってよいのやら、検討がつかぬ。
更に、発熱となると、すぐに診てもらえる所もなかなかなく、
電話のたらい回しの末、とある循環器クリニックに迎え入れて
もらえることとなった。

発熱というだけで、「疑わしきは…」的に隔離された
プレハブ小屋に閉じ込められ、まるで動物の飼育係のような
風情で医師が小窓から覗き込む。
何はなくとも、巷にはびこる感染症の恐れがないか、それを
第一に確かめるためと、鼻に細い管を差し込まれ、検査。
この際、当の患部である喉のほうは、二の次なのだろうか。

しばらくして、
「よかったですね、陰性でしたよ」
医師が、マスク越しなのでよくわからないが、おそらく笑顔で、
検査結果を告げに来た。

解熱剤とうがい薬を処方されて、すごすごと帰ったが、
肝心の「命名」がなされておらず、腑に落ちないままの私。

まる1日経ち、熱は引いたが、相変わらずの(というより、
更にひどくなった)喉の痛みを抱えて、耳鼻咽喉科を受診する
ことにした。

今回は、真っ先に口を開けさせられ、喉の腫れを目撃した医師が、
「すごい、大火事だ!…で、どうして喉痛いのに、喉診なかったん
だろう?」
と、ポツリ。
「まずは、コロナでなくてよかったですね、と」
「よくないでしょ!」
「して、病名は?」
「扁桃炎だね。溶連菌が陽性反応出てるから」

まるで洗脳されるかのように、感染症というと、一つの病名だけが
頭の中を巡ってしまいがちだが、他にも名づけるべき病名がいろいろ
あるのだと思い出させてくれた一件。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み