第1話

文字数 1,168文字

20XX年。“差別化政策”が施行された。

差別化政策とはその名の通り、人の能力によって居住地、給料、保険、教育など、全ての生活が決まる政策である。毎年12月の最後の5日間、全国で一斉に行われる“全国民能力評価テスト”を受け、次年度の生活水準が決定される。18歳以上の一人ひとりに対して上位者は年10億円、最下層の人間には100万支給される配当金。さらに、居住地は上位者から選択制となる。つまり最下層の人間は無人島などに1年住む可能性があるということだ。
“全国民能力評価テスト”は英数国理社の5教科に加え、運動テスト、専門職試験、精神強度試験など多岐にわたる。どれかの試験で優秀であれば、ある程度の生活水準が確保されるが、全ての能力が平均以下だと生活水準は酷いものになる。さらに、投票する権利なども最下層は無い。

小学生以上にもこの試験は行われ、教育の質にテストの点数は関わってくる。上位者は一人ひとりに専任の教師が付き、時間割なども全て個人で決められる。一方で最下層には先生すら付かず、教材が送られて、その教材を自分で、あるいは両親などに教えてもらわなければならない。つまり、どんどん知識レベルの差が大きくなる。

なぜ差別化政策が施行されたのか?
それは、日本という国の発展を考えてだと言われている。
どのような社会でも上位30%の人間は優秀で、中間層の30%はどちらでもない。
一方で下位30%は社会全体の足を引っ張ると言われている。
そして、この政策はよく言えば上位者の更なる知識、技術などの能力アップを目指し、悪く言えば“使えない人間の排除”を目指すと言える。

そして、政策が施行され10年が過ぎた。
私は10年の節目を記録するためにこの文章を書いている。

結論から言うとこの政策は国から見ると成功してしまった。
“成功してしまった”という表現を使うのは最下層の人からすると最悪な政策だからだ。
この政策が施行する前年、日本のGDPランキングは過去最低の11位、幸福度ランキングは51位であった。
しかし、今年のGDPは3位にまで浮上。世界規模の企業も成長しつつある。
これはまさに上位の人にお金と環境を極限まで提供した結果だといえよう。
たった10年で3位まで浮上し、成長率は前年比5%を記録している。
様々な分野で世界のトップになるような日本人がここ数年で飛躍的に増加している。
これは国としては非常に嬉しいことであろう。

さて幸福度ランキングはどうなったか?
幸福度は今年130位であった。
日本という国は幸福を捨て、経済成長を取ったということである。
最下層の人はどうなったか。それは想像してもらった方がいいだろう。

少しヒントを出す。
最下層における、、、
飢餓率:20%
自殺率:32%
犯罪率:24%
薬物使用率:21%

さてこの政策は本当に上手くいったと言えるだろうか?


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