トンネルから
文字数 1,989文字
「いやありえないだろ……なんだこれ」
ごく普通のどこにでもあるようなトンネルを車で走ってたんだよな。
ユウジと俺シンヤとミキちゃんとキヨカちゃんの同じ大学に通ってる友人グループ。
ちなみに俺はキヨカちゃんが良いなと密かに思っていた。
山の向こうの小さな海辺の町が雰囲気良くて夕日がめっちゃキレイだから皆にも見せたいってユウジが言い出したんだ。
ユウジの運転で助手席にミキちゃんで後部座席には俺とキヨカちゃん。
どうでもいい雑談しながらポテチとか食べてるうちにトンネルに入った。
そして一瞬眩しい光に包まれたと思ったらトンネル内がカラフルというか玉虫色って言うのかなんとも言えない色合いになってきた。
ユウジは戸惑った様子で
「なになに? え? なんで?」
とか言ってた。
ミキちゃんはキョロキョロとまわりを見ながら
「わーキレイだねー」
と楽しそうにしてた。
キヨカちゃんは無言で不安げな顔で窓の外を見たり助けを求めるような目で俺を見てきたりした。
やっぱキヨカちゃんかわいいなと俺は思った。
カラフルなトンネルだったのは数秒くらいだったと思う。
トンネル内がどんどん明るくなってきて眩しくなってきて視界が真っ白になった。
真っ白になる直前に俺はキヨカちゃんの手を握った。
俺がキヨカちゃんを守らねばって思いと、眩しい光でまわりが見えにくくなってきて不安な気持ちで。
キヨカちゃんが俺の手を強く握り返してきて嬉しかった。
視界を奪ってた光がだんだん弱くなってきてやっとまわりが見えるようになったらいつの間にか車じゃなくて白い石の床に座ってた。
俺とキヨカちゃんは手を握りあって。
ユウジとミキちゃんも目の前にいた。
何が起こったのかわけわからなくて4人で無言で顔を見合わせてた。
俺達4人は広い天井の高い建物の中にいて、写真で見た事のあるヨーロッパとかの外国の教会みたいな所だった。
数十人の人達が俺達のまわりを囲んでいて、これまた写真で見た事のある昔のヨーロッパが舞台のドラマに出てくるような顔立ちと服装の人達だった。
マント付けてて豪華そうな服装のおじさんが俺達に近付いてきてニコニコと笑顔で言った。
「異世界の勇者たちよ、グランド王国へようこそ」
は? 今異世界って言った? それに勇者? 聞き間違い?
てか日本語喋ってるな、見た目は外国人っぽいけれど。
ユウジがぽつりとつぶやいた。
「まさか異世界転生ってやつ?」
すかさずミキちゃんの突っ込みが入った。
「いや転生じゃなくて転移じゃない?」
おじさん達の話によると最近魔物が町の近くに出現するようになったので異世界から勇者を召喚したらしく、どうやら俺達が勇者らしい。
ちなみに元の世界にはもう帰れないらしい。
ひどくね?
適性検査するとか言われていろんな刀だの弓だの持たされたり魔法の呪文を復唱させられたりした結果、なんとキヨカちゃんに魔法の才能がある事がわかったんだ。
それから俺達はそれぞれ王宮内に個室を貰って暮らす事になった。
最低限の衣食住は保証されてるけれど本当に最低限レベルなので外に食事に行ったりマシな服を買う為には金を稼がなければならなくなった。
ユウジと俺は城の文官とやらになって書類整理とか部屋の備品の補充とかの仕事に就いた。
この世界の文字はなぜか日本語だったので書類仕事もなんとかできた。
そしてミキちゃんは城で働く侍女になった。
キヨカちゃんは半年程魔法の練習をしてから魔物退治の旅に。
兵士達や王子様も一緒に総勢100人くらいで3ヶ月くらいかけて国内を魔物退治して回ったらしい。
魔物の脅威がなくなって異世界は平和になった。
あれから30年くらい経ったんだよな。
ユウジとミキちゃんは結婚して今は孫もいて城下町で食堂経営してる。
キヨカちゃんは一緒に魔物退治に行ってた王子様と結婚して今は王妃様になってる。
俺は今も城の住み込み文官で独身のままだ。
元の世界の親とか友達とかどうしてるだろうって時々考える。
考えても戻れないし何も出来ないんだけど。
晩酌しながらゆっくり夕飯食いながら明日の仕事の段取りを考えたりしつつウトウトしてたら。
「シンヤ君大丈夫?」
若い頃のキヨカちゃんが心配そうな顔で覗きこんできてた。
「えっ? あれっ? 車の中?」
ユウジが運転する車の後部座席に座っている俺とキヨカちゃん。
車はトンネルの中を走っている。
助手席からミキちゃんがこっちを振り返って言った。
「シンヤ君うなされてたよ。怖い夢でも見たの?」
そうか、夢だったのか。
そうだよな。
異世界に行くとか有り得ないよな。
「夢見てたかも。でも怖い夢じゃなかった」
「なんだそれ、ホントは怖い夢だったんだろ」
ユウジの笑い声につられて俺も笑う。
ミキちゃんとキヨカちゃんも笑顔だ。
その時突然トンネル内が明るくなって壁がいろんな色に光り出した。
まさか。
「いやありえないだろ……なんだこれ」
カラフルな光に車ごと包まれ視界が真っ白になっていく。
ごく普通のどこにでもあるようなトンネルを車で走ってたんだよな。
ユウジと俺シンヤとミキちゃんとキヨカちゃんの同じ大学に通ってる友人グループ。
ちなみに俺はキヨカちゃんが良いなと密かに思っていた。
山の向こうの小さな海辺の町が雰囲気良くて夕日がめっちゃキレイだから皆にも見せたいってユウジが言い出したんだ。
ユウジの運転で助手席にミキちゃんで後部座席には俺とキヨカちゃん。
どうでもいい雑談しながらポテチとか食べてるうちにトンネルに入った。
そして一瞬眩しい光に包まれたと思ったらトンネル内がカラフルというか玉虫色って言うのかなんとも言えない色合いになってきた。
ユウジは戸惑った様子で
「なになに? え? なんで?」
とか言ってた。
ミキちゃんはキョロキョロとまわりを見ながら
「わーキレイだねー」
と楽しそうにしてた。
キヨカちゃんは無言で不安げな顔で窓の外を見たり助けを求めるような目で俺を見てきたりした。
やっぱキヨカちゃんかわいいなと俺は思った。
カラフルなトンネルだったのは数秒くらいだったと思う。
トンネル内がどんどん明るくなってきて眩しくなってきて視界が真っ白になった。
真っ白になる直前に俺はキヨカちゃんの手を握った。
俺がキヨカちゃんを守らねばって思いと、眩しい光でまわりが見えにくくなってきて不安な気持ちで。
キヨカちゃんが俺の手を強く握り返してきて嬉しかった。
視界を奪ってた光がだんだん弱くなってきてやっとまわりが見えるようになったらいつの間にか車じゃなくて白い石の床に座ってた。
俺とキヨカちゃんは手を握りあって。
ユウジとミキちゃんも目の前にいた。
何が起こったのかわけわからなくて4人で無言で顔を見合わせてた。
俺達4人は広い天井の高い建物の中にいて、写真で見た事のあるヨーロッパとかの外国の教会みたいな所だった。
数十人の人達が俺達のまわりを囲んでいて、これまた写真で見た事のある昔のヨーロッパが舞台のドラマに出てくるような顔立ちと服装の人達だった。
マント付けてて豪華そうな服装のおじさんが俺達に近付いてきてニコニコと笑顔で言った。
「異世界の勇者たちよ、グランド王国へようこそ」
は? 今異世界って言った? それに勇者? 聞き間違い?
てか日本語喋ってるな、見た目は外国人っぽいけれど。
ユウジがぽつりとつぶやいた。
「まさか異世界転生ってやつ?」
すかさずミキちゃんの突っ込みが入った。
「いや転生じゃなくて転移じゃない?」
おじさん達の話によると最近魔物が町の近くに出現するようになったので異世界から勇者を召喚したらしく、どうやら俺達が勇者らしい。
ちなみに元の世界にはもう帰れないらしい。
ひどくね?
適性検査するとか言われていろんな刀だの弓だの持たされたり魔法の呪文を復唱させられたりした結果、なんとキヨカちゃんに魔法の才能がある事がわかったんだ。
それから俺達はそれぞれ王宮内に個室を貰って暮らす事になった。
最低限の衣食住は保証されてるけれど本当に最低限レベルなので外に食事に行ったりマシな服を買う為には金を稼がなければならなくなった。
ユウジと俺は城の文官とやらになって書類整理とか部屋の備品の補充とかの仕事に就いた。
この世界の文字はなぜか日本語だったので書類仕事もなんとかできた。
そしてミキちゃんは城で働く侍女になった。
キヨカちゃんは半年程魔法の練習をしてから魔物退治の旅に。
兵士達や王子様も一緒に総勢100人くらいで3ヶ月くらいかけて国内を魔物退治して回ったらしい。
魔物の脅威がなくなって異世界は平和になった。
あれから30年くらい経ったんだよな。
ユウジとミキちゃんは結婚して今は孫もいて城下町で食堂経営してる。
キヨカちゃんは一緒に魔物退治に行ってた王子様と結婚して今は王妃様になってる。
俺は今も城の住み込み文官で独身のままだ。
元の世界の親とか友達とかどうしてるだろうって時々考える。
考えても戻れないし何も出来ないんだけど。
晩酌しながらゆっくり夕飯食いながら明日の仕事の段取りを考えたりしつつウトウトしてたら。
「シンヤ君大丈夫?」
若い頃のキヨカちゃんが心配そうな顔で覗きこんできてた。
「えっ? あれっ? 車の中?」
ユウジが運転する車の後部座席に座っている俺とキヨカちゃん。
車はトンネルの中を走っている。
助手席からミキちゃんがこっちを振り返って言った。
「シンヤ君うなされてたよ。怖い夢でも見たの?」
そうか、夢だったのか。
そうだよな。
異世界に行くとか有り得ないよな。
「夢見てたかも。でも怖い夢じゃなかった」
「なんだそれ、ホントは怖い夢だったんだろ」
ユウジの笑い声につられて俺も笑う。
ミキちゃんとキヨカちゃんも笑顔だ。
その時突然トンネル内が明るくなって壁がいろんな色に光り出した。
まさか。
「いやありえないだろ……なんだこれ」
カラフルな光に車ごと包まれ視界が真っ白になっていく。