第1話 箱入り娘

文字数 1,014文字

○東京高輪の高級シティーホテル、フランス料理店「Kenzo Takaizo」19:00


シャラララ〜♫

チャラララ〜♫

店内には、ポール森屋の名局「エーゲ海の汁女」が流れる。
涼子さんっ、本日はワタシのような者のためにわざわざ脚をお運びいただきまことにありがとうございます。
まあっ、綺麗なレストラン。

音楽も素敵だわ。

一朗さんって、よくここにいらっしゃるの?

この「Kenzo Takaizo」はね、明治の官僚だった曽祖父の頃から使わせてもらっているんですよ。
まあっ、大伴さんって由緒正しい御家柄なようですね。よかったら涼子に伺わせてもらえますか。
可愛い仕草で男心をくすぐる涼子。
わが大伴家はね、先祖を遡ると大伴オカモチに行き当たるんですよ。

“オカモチを もって蕎麦屋の 苦労知る”

フランス料理店で、謎の川柳を詠む一朗。
満月に おいど晒して いと涼しい


白きかみなく ふくたけのかわ

変態的な歌で返す涼子。
うっ!

(かみを紙と神と髪にトリプルで掛けてる。時期は来た、今晩いっしょになる覚悟はしている涼子です。祝言はまだだけど、あなたの○んぽをしゃぶるわ。変態的だが見事な歌だっ!)

ウチは没落藤原氏だから、一朗さんに憧れちゃうな。

ワタシね、十歳の初潮以来、貞操帯をはめられてるの。

由緒正しい精子で妊娠しないと駄目だって父が指導してるの。

鍵を見せる涼子。
うっ!

(中世の貴族の娘かっ。蒸れるだろ)

そんな厳格な父の影響で、もう涼子もアラサーなの。寂しいわ。
さっ、話はもういい。料理もワインも卓に来たんです。早速に堪能しましょうか。あなたのような才媛と卓を囲めるなんてこんな嬉しいことはありません。
そんなこと言われると、涼子嬉しくてアムール貝からお汁がいっぱい出ちゃうわ。
ははははっ。
涼子の謎の比喩にひきつる一朗。
散々飲み食いして二時間後...
いやだ、涼子久々のワインで酔っちゃったみたい。ごめんなさい、もう眠くなって来ちゃって。
では、もう上の階に用意してある部屋で一緒に休みましょう。安心してくださいね、大伴家の家訓で結婚しないうちは女の子には手を出さないルールになっていますから。
紳士なのね、一朗さんって。
○1102号室、一朗と涼子が泊まっている部屋、午前二時の丑三時。
Zzzzzzzz...ppppppp....

Ggggggggg........

部屋に鳴り響く轟音。
(なんだ、この凄いイビキは?

でも、ぼくはこの娘が気に入った。

結婚したら、耳栓買おう)

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