ケイトとわらえないおひめさま

もりのなかのちいさなおうち。そこにはケイトというおんなのこがおかあさんとふたりでくらしていました。

ケイトのおかあさんは、どんなびょうきやけがもなおすことができるまじょ。きょうは、ねんにいちどひらかれる、まじょのパーティーへいかなくてはいけません。
だから、ケイトはおるすばん。おりょうりや、どくしょをしてすごします。ケイトはまだ、おかあさんのようにまほうをつかうことはできませんでしたが、おりょうりはだいとくいです。

きょうもなにかをつくろうとしていたら、げんかんのほうからコンコンととびらをたたくおとがきこえます。
ケイトがとびらをあけると、せのたかいおとこのひとがたっていました。

「わたしは、おしろではたらいているものです。まじょのアンナさんはいますか？」
「アンナおかあさんは、いまはるすです」
「そうですか」

おしろのひとはざんねんそうにいいました。ケイトはくびをかしげます。

「なにかあったんですか？」
「じつは、おしろのおひめさまがのろわれてしまったようなのです。おとといから、いっさいわらわなくなってしまって。きっとなにかののろいにちがいありません」

おしろのひとのことばに、ケイトはくるしくなりました。おひめさまはケイトとおなじとし。じぶんとおなじとしのこがのろわれてしまったとかんがえると、ケイトはいてもたってもいられなくなりました。

「わたしはまじょアンナのむすめ、ケイトです。わたしがおひめさまののろいをといてみせます」

ケイトはむねをはると、くろいさんかくぼうしをかぶり、おしろへむかいました。

おしろにつくと、ケイトはおひめさまのいるへやにあんないされました。へやにはいるとなかはまっくら。へやのまんなかには、おひめさまがうずくまっていました。
おひめさまは、ケイトがへやにはいるとかおをあげます。

「こんにちは。わたしは、ケイト。あなたのおなまえは？」
「モニカ」

おひめさまはちいさなこえでこたえます。

「ねえ、モニカ。どうしてあなたはわらわなくなったの？」
「かなしいの。おとうさまたちはいそがしくて、ごはんをたべるときはいつもひとりきり。おしろのそとにはだしてもらえない。まいにちおべんきょうばかりで、おともだちもいない。それがかなしくて」

モニカのなみだをみて、ケイトはへやをとびだし、だいどころへむかいました。おどろくおしろのひとたちをはねのけて、ケイトはさけびます。

「これは、のろいをとくためのまほうよ！」

ケイトはりょうりをつくります。そして、おしろのひとたちに、ふたりがすわれるくらいのおおきさのぬのをよういするようたのみました。
のろいとをくためのまほうならばと、おしろのひとたちはケイトのいうことにしたがいました。
ケイトはできたてのサンドウィッチをおさらにのせ、すいとうにあたたかいおちゃをいれると、モニカをへやからつれだしました。

「けんこうは、おいしいたべものとおひさまから」

それはケイトのおかあさんのくちぐせです。それをおもいだしながら、ケイトはモニカをなかにわへつれていきました。

「ここはそとでも、おしろのそとじゃないからだいじょうぶ」

そういってケイトはなかにわのおひさまがあたるばしょへぬのをひろげ、そこへおさらとすいとうをならべました。そしてぬののうえにモニカといっしょにならんですわると、ケイトはモニカにはなしかけました。

「モニカののろいをとくのにひつようなのは、ともだちだとおもうの。もし、モニカがいいといってくれるなら、わたしはまいにちあなたにあいにくる。そしていっしょにごはんをたべて、いっしょにあそぶの。おしろのなかでもできるあそびはたくさんあるよ。だから、」

ケイトはモニカにほほえみました。

「わたしと、おともだちになろう」

モニカはケイトがさしだしたサンドウィッチをうけとると、それをパクリ。するとモニカはまほうにかけられたようにちいさくわらいました。