第1話

文字数 670文字

 一年ぶりに夜空をみあげた。
 そしたら、コレ梅干じゃない? としか思えない星が、満天の星空のなかにおおきく輝いていた。しかし証明のしようがない。
 そこで家人みんなをテラスによんで、確認してもらった。家人といっても三十路の妻と、三歳の娘である。
 二人ともぼくの「梅干説」に同意してくれたが、これをもって証明とするのははばかられた。
 そこで町の住人みんなにも訊いてまわったのだが、全員が同意してくれた。それでも根拠不十分だ。けっきょく食ってみなきゃわからんだろう、というので、30000光年かけて旅し、食ってみた。
 梅干としかおもえない。(星なのに温度も梅干だ)
 しかしそのときになって気づいたのだ。これでも不十分だ。
 30000光年かけて地球にもどり、科学者をつれて星に箸をつけ、その者にも味わってもらった。彼も「梅干説」に同意した。
 しかし分析機材を忘れてきていたのだ。証明したことにはならない。
 また往復60000光年かけて分析した。科学者は梅干だと断言した。
 しかしこの一人がうけあってくれたところで、根拠不十分ではないだろうか?


 ダークマターとダークエネルギーに支配された暗黒の宇宙……
 ぼくのこの苦難に満ちた探求のあいだに、妻は孤独にたえかねて再婚し満100歳で死んだ。
 娘は兵士になって214人の敵兵を殺し、PTSDに苦しみながら4人の子供を育て29人の孫に囲まれ86歳の生涯を閉じた。
 ぼくが満足のいく証明をできないうちに地球は消滅し、ぼくは猫にかこまれ煮干系第9惑星キャッツ・アイに暮らしている。

 あの星は梅干にちがいない……
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