1_プロット

文字数 1,742文字

「クリーニング店「スパイ」の見え透いた秘密」プロット
起)主人公の小学四年生「土御門朝」ことアサは、物静かなイケメンで緑色の目をした男の子だ。今でこそ登校しているが、入学当初学校になじめなかったアサは、学校の代わりに祖父と叔父が経営するクリーニング店に通っていた時期があった。洗剤と少しの油の匂いが大好きだった彼は、叔父が失踪し祖父が倒れたことで、クリーニング店が閉店の危機にあると聞いたとき、病床で叔父に怒っている祖父に宣言した。「叔父さんの代わりに俺が店に立つよ」叔父の失踪前の言動は謎に満ちたものだった。しかもアサをクリーニング店の業務から引き離そうと祖父がしていたことから、店に何か秘密があることを承知で、アサはクリーニング店「スパイ」を臨時店員として見よう見まねで再開した。

承)繁盛していた「スパイ」から客足が遠のいていき、アサはいらだちを隠せなかった。アサの「スパイ」勤務を認めていない両親と祖父は非協力的で、叔父の失踪の謎解きの手がかりである手紙すら見せてもらえなかった。早朝からクリーニング工場の集荷対応と接客を行い、登校して勉強をおざなりに寝て、放課後になればすぐに帰る生活で、アサのことは学校で問題になりつつあった。心配した数少ない友人たちとけんかをして、クリーニング工場の洗濯職人とも対立したアサは、客の思い出の服に取り返しのつかないミスをしてしまう。心を入れ替えたアサは、職人に頭を下げて技術を学び、友人と仲直りして自分に足りない愛想を教えてもらったことで、「スパイ」に少しずつ客足が戻ってくる。

転)「いつものように、『スパイ特別仕上げ』で頼むよ」英国紳士然とした涼やかな顔をした老人が、戦闘痕の残る高級スーツを預けに来る。内心の興奮を隠して何食わぬ顔でアサは受け取る。スパイ特別仕上げは超高級コースの対応で、祖父からそのような客が来たら、連絡するように言いつけられていた。そしてその客を満足させることが出来たら、店存続に協力し、叔父の失踪に残された手紙を見せると約束されていた。上の空だったアサは、高級スーツを後から来た別の客が見とがめていることに気づくのが遅れた。「『スパイ特別仕上げ』の服を受け取りに来た。お前はケイの甥だろう、いやあ大きくなった」叔父のケイを知る屈強な男が、老紳士の服を受け取ろうとするも、クリーニング店の基本でアサは返答する。「伝票を確認できますでしょうか。それとわたくしに叔父さんのお話をお聞かせ頂けますか」その間に迅速に老紳士に連絡を入れ、完璧な接客で男の足止めをしたアサの手際に、戻ってきた老紳士は褒め言葉をかける。

結)「あの店は英国スパイだったお前のおばあちゃんとわしが作った、スパイお断りの店なんだ。スパイと名前のついた店に彼らは近づかないと、当時のわしらは思ったんだよ」老紳士から連絡を受けていた祖父は、アサに店の秘密を話した。クリーニング店「スパイ」は街のクリーニング店というだけでなく、国で狙われやすい仕事をしている人の洋服を預かっている。彼らが利用するのが「スパイ特別仕上げ」だった。「人間誰だって、ポケットに機密事項が残っていることなんてザラにある。わしたちはそんな不幸をそっと見てみないふりをするんだよ。そして違う人が受け取りに来たら追い返す」アサは首を傾げた。「そんなの俺たちなら当たり前じゃないか?」祖父は首をふって、叔父の手紙を差し出した。そこには世界の秘密を忘れもので知ってしまったことと、解決するために店をでることが記されていた。アサは大好きな叔父さんと言えど許せないと思った。「守秘義務違反に業務上横領だ。本当ならひどいよケイ叔父さん」叔父を見つけ出して真偽を問い、本当のことだったならば、クリーニング店の極意を忘れた彼を必ず叱咤しなければいけないと、アサは決意した。決意しながらアサは店に立った。アサの背後には臨時店員と認められた彼が付け加えた注意事項が貼られている。「お預け前のポケットにはご注意を。また、中身は事前に改めさせて頂き、場合によっては内容のご確認をさせて頂きます」内容確認で叔父を見つけるため、今日もアサは控えめながら愛想よく、そして注意深く、クリーニング店「スパイ」を開店している。
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