出土
文字数 1,010文字
『専門家の鑑定の結果、白骨遺体は室町時代の女性であると判明し、事件性は無いとの事でした。今後は貴重な史料として郷土資料館に引き渡しになるとの事です』
2、3日前に隣街で整地を行う業者が、白骨化した人骨を見つけてニュースになった。
僕はてっきり何かの事件に巻き込まれた人の遺体だと思っていたので、今しがた流れた続報は少し拍子抜けした気持ちにさせた。
いつの間にかに帰宅していた同居人の一樹が、飲み物の入ったコップを両手に炬燵の中に入り込んできた。
僕は当たり前のように差し出されたドリンクに口をつけて返事をする。
一樹は鼻で笑っていたけど、僕は真面目に答えたつもりだ。
言い終えたあとドリンクを一気飲みし、炬燵の上に置いてあるミカンを手に取る。
甘さが控えめで物足りなさを感じる出来栄えだけど、腹を満たせるのなら構わない。
一樹は僕の顔をしげしげと眺めてくるから、ミカンを一房向いて手渡してやった。
僕の興味は人骨から目の前にあるミカンに移っていた。
一樹の耳には僕の声が届いていないのか、僕の問いを無視して話し続けている。
眼は見開かれて血走っており、唇の端には唾の泡が出来ている始末。
何かに魅入られて恍惚とした表情で、僕を凝視しているのが物凄く気持ち悪くて怖気を覚えた。
なのに頭はふらふらと軽くなって来て、目の前の視界がぐらぐらと歪んで暗幕を降ろすように暗くなってきた。
意識が朦朧としてきて、僕が僕である内に聞き取れた言葉は……
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)
(ログインが必要です)