第1話

文字数 1,547文字

 あるところに、ちいさなくにがありました。
 ちいさなくにのおひめさま、ショコラは、からだはちいさいけれど、とてもがんばりやで、ゆうきのあるおんなのこです。
 りっぱなおひめさまになるため、まいにち、けんのおけいこや、べんきょうにはげんでいました。

 ちいさなくにのとなりには、おおきなくにがありました。
 ちいさなくにでは、おかしづくりがさかんで、ひとびとはみんな、おかしがだいすきです。
 おおきなくには、おかしづくりのぎじゅつはありませんが、おいしいくだものがたくさんとれます。
 あるとき、おおきなくにのおうさまが、「ちいさなくにでつくっている、おかしをわけてくれないか?」と、たずねてきました。
 ちいさなくにのおうさま、つまり、ショコラのおとうさんは、「もちろんいいけれど、そのかわりに、おおきなくにでとれる、くだものをわけてほしい」と、こたえました。
 しかし、おおきなくにのおうさまは、「いやだ。うちのくにのくだものは、ひとつもわたさん!」といいます。
 さらに、おおきなくにのおうじが、ちいさなくににやってきて、むりやり、おかしやさんでおかしをぬすもうとしはじめました。
 そうなると、たいへんです。
 おおきなくにのおうじは、ちいさなくにのひとよりもからだがおおきいので、とてもかないません。
 まちのひとびとは、おおさわぎです。

 ちいさなくにのおうさまは、ひどくこころをいため、びょうきになって、ねこんでしまいました。
 おうさまのびょうきをなおすには、くだものをたべさせなくてはなりません。
 
「たいへんだわ。おとうさまのこともみんなのことも、たすけなくちゃ」
 ショコラは、ひとりでまちへでて、おかしやさんにむかいました。
 おかしやさんでは、おおきなくにのおうじが、あばれています。
「おかしをぬすむのは、やめなさい!」
 ショコラがいうと、おうじは、けんをかまえて、ショコラのほうへむけました。
 どうやら、まったくはなしをきくきが、ないようです。
 ショコラはしかたなく、じぶんのけんをとりだして、たたかいました。
 ショコラは、おうじのこうげきを、かるがるとかわします。いつも、くんれんしているショコラにとって、これぐらいへっちゃらです。
 やがて、おうじはつかれはてて、へたりこんでしまいました。
 そして、ショコラはそのすきに、おうじがもっていたけんを、とりあげました。
「このけんは、わたしがもらうわ」
 おうじは、ふまんげなかおをします。
「だめだ!ひとのものをかってにとるなんて、ゆるせない!」
「それは、いま、あなたがしようとしているのと、おなじことよ。ここにあるおかしだって、かってにとっていいものではないわ」
 すると、おうじは、なにもいえなくなりました。
「このけんをかえしてほしければ、まずは、あなたがぬすんだおかしを、ぜんぶかえして。そして、おおきなくにへかえって、おうさまに、こういうのよ。『ちいさなくにのおかしがほしいならば、おおきなくにからも、くだものをわたすべきです。おおきなくにだけがいいおもいをするのは、よくありません』と。そうすれば、あなたに、このけんをかえします」
 ショコラのことばをきいて、はんせいしたおうじは、すごすごと、おおきなくにへかえっていきました。
 そして、ショコラにいわれたとおりのことを、おうさまにいいました。
 おうじにいわれて、かんがえなおしたおうさまは、くだものを、ちいさなくににわけあたえることを、きめたのです。

 こうして、ちいさなくにには、へいわがもどってきました。
 おかししょくにんは、おおきなくにからもらったくだものを、おかしづくりにつかいました。
 そして、そのおかしをたべたおうさまは、げんきになり、ショコラとおうさまは、しあわせにくらしたのでした。
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