第1話

文字数 1,584文字

 もりのいりぐちにさーしゃという、くりいろのかみをおさげにした、とてもかわいらしいしょうじょがすんでいました。
まずしく、うまごやのようなところにすんでいましたが、かぞくみんながきれいずきなので、さーしゃもようふくもくつも、いえのなかまでいつもきれいにしていました。
 あるひ、いどがかれてしまい、さーしゃはもりのいずみにみずをくみにいくことになりました。
ところが、とちゅうでみちにまよってしまい、もりのなかをぐるぐるぐるぐる。
あたりはすっかりくらくなってしまったのです。
とおくでおおかみが「わおーん」。
さーしゃは、おもわず「たすけてください!」といのりました。
すると、めのまえにちいさいけれど、あたたかなひかりがあるいえがあらわれたではありませんか!
さーしゃは、“かみさまかだれかがたすけてくださった!”とまよわずに、そのいえにはいりました。
 はいってみると、いえのなかはくものすとほこりだらけ。
さーしゃは「こんなところではねむれないわ!」とおなかがすいているのもわすれて、そうじにとりかかりました。
すると、どこからかちいさなこえが……。
みみをすますと、まどが「ふいてくれ」、ゆかが「みがいてくれ」といっているのです。
“これもかみさまのようなものがたのんでいるにちがいない”とおもったさーしゃは、はたきでくものすをとりはらい、ほうきでほこりをはきだし、もっぷでみずぶきしました。
 そこは、おどろくほどごうかないえでした。
おなかがなると、「とだなのぱんをおたべ」といえがいうので、さーしゃはかたいぱんをたべ、つかれていたため、すぐねむってしまいました。
 どしんどしん、どしんどしん。
おおきなあしおとにさーしゃはとびおきました。
まどからそとをみると、すっかりあかるくなっています。
そのあしおとはいえのまえでたちどまり、おこったこえがきこえました。
「だれだ!おれのいえをそうじしたのは!」
 さーしゃは、ちいさいころにおばあちゃんから「もりにはおそろしいまものがすんでいるのよ」ときいたのをおもいだして、からだをぶるっとふるわせました。
「くそ!きれいにしやがって!」
「おれは、きたないものがすきなんだ!」
「でてこい!くってやる!」
 さーしゃがふるえていると、いえがあることをさーしゃにささやきました。
それをきいたさーしゃは、こわいけれどできるだけおちついたこえをだして、まものにいいました。
「まものさん、きたないいえがすきなのなら、ここからきたへみっかあるいたところに、だれもすんでいないほったてごやがあります。そこはどうぶつたちのふんにょうでひどくよごれているそうですよ」
「なんだと!ふんにょうでまみれたこやだと!ほんとうか?」
さーしゃは、きてんをきかせてこたえます。
「えぇ、とてもくさいにおいがして、このいえよりずっとずっときたないそうです」
「そりゃあいい!よし、こんかいはゆるしてやる」
どしんどしん。まものはどこかにいってしまいました。
 さーしゃはいえにいいました。
「ほったてごやのこと、おしえてくれてありがとう」
すると、いえはすてきなおとこのこにすがたをかえました。
「ぼくは、もりのいずみのせいなんだ。あのまものがいつもいずみをよごすから、あいつのいえにばけておいはらうきかいをうかがっていたのさ。きみがそうじをしてくれたおかげで、おいだすことができたよ。ありがとう」
さーしゃは、「どういたしまして」と、わらいました。
「おれいに、きみのいえのいどともりのいずみをつなげてあげよう。そして、とくべつにきみのいえをぼくがすがたをかえていたいえとおなじにしてあげるよ」
 さーしゃはとてもよろこんで、みずにこまることなしに、あたらしいごうかないえで、かぞくとずっとしあわせにくらしました。
たくさんのしんせきやともだちがあそびにきて、いつもにぎやかだったそうですよ。


おわり
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