スカーレット・モンク（１）

　ちょっと遅めの反抗期かも知れない。
　「本物の東京」生まれＮＥＯ　ＴＯＫＹＯ育ちの陽(ひなた)師匠と、大阪生まれ九州育ちのあたしでは、食べ物の好みで口喧嘩になる事が多くなった。
　そのせいで、最近、瀾(らん)師匠の家に泊まる事が多くなってるんだが……。
「おい……師匠……髪とかしてくれ〜」
　朝になってみると、一緒に泊まっていた輝(てる)が、とんでもない寝癖の髪で両手にバカデカい恐竜のヌイグルミを持ってふらついていた。
「朝飯作ってるんで手が離せない」
　輝(てる)は寝惚け眼をあたしに向ける。
「頼む」
「何で？」
「頼む」
「そのクソ長い髪切れ。そうすりゃ、明日から寝癖に悩まずに済むぞ」
「嫌だ」
「しょ〜がねえなあ、やりゃいいんだろ」
　輝(てる)は瀾(らん)師匠の化粧台の前に座り……。
「お〜い、私の化粧品、勝手に使うなよ」
「何でだ、師匠？」
「『何でだ』って何でだ？」
「言われてみれば……○×▽∴◇ッ‼」
　あたしが髪にブラシを入れると、輝(てる)は意味不明な悲鳴を上げ……。
「どうした？」
「痛い」
「あ……悪い……。って、何で、あたしが謝る必要が有る？」
「女の髪もマトモに梳けんのか？」
「うるせえ、あたしはお前のメイドじゃねえ。お前、どこのお姫様のつもりだ？」
「そりゃいいけど、朝飯出来たぞ。迎えが来る前に食え」
　そうだ……今日から新しい任務(しごと)だ……。