第1話

文字数 1,127文字

少し暑さが和らいぐ夕方から夜に変わる時間ー



電話ごしに「今から会いたい」って言われて
何%の男女が嬉しいと感じるんだろう?
80%?50%?

なぜぼくが会いに行くんだろ?
なんで「今」なんだろ?
明日じゃダメかな?
そしてぼくは会いに行くの?
毎日毎回会って何の話があるんだろうか?
そんなことを考える時点でこの関係は自分の中で終わってしまって
「終わり」と頭をよぎった時点でなんだかぼくの心のシャッターが、ガラガラと音を立てて閉まってしまった。
今は、どうやってこの関係性を終わらせたらいいのかを少しずつ頭の片隅で考え始める。
ただぼくの行動は真逆で、きみの自宅に近い待ち合わせの公園へ向かっていた。
公園に着くと既にきみが待っている。
「ごめん、遅くなって」
なぜぼくは謝るんだ?
きみより着くのが遅かったから?
それとも、もう心がきみへ向いていないから?
自問自答してきみが話の内容なんてちっとも入ってこない
誰もいない公園にベンチに二人
今日朝起きたら顔がむくんで大変だったとか
ランチの店員の態度がどうとか、一通り今日の報告が終わる。
話も途切れて、会いたいと言った理由も言わず
聞かされず、結局無言のままきみが納得するまで一緒にいて帰される。
それの繰り返しー
きみと別れて帰路につく。
ぼくはなんのためにきみに会いにいくのだろう。
風が真正面から当たる。その感触は昔、どこかで同じような風に当たった記憶を呼び起こす。
ああそうだ、小さな港町でサマースクールに通っていた頃、電車から降りた途端に当たった風と同じ。
休日は電車に乗って 近くの観光地や、古着屋を探しに出かけていた。
電車はたまに遅れたり、たまに止まる。
ある時、ぼくが乗っていた電車が動かなくなったことがあった。
止まって30分は経過した。
ぼくの左窓から海が見える


近くに座ってた人が話始める
『よくあることさ』
ぼくに話かけているらしい。
田舎の電車にはご想像の通り、がらんとしている
ぼくの乗った車両に乗客は3~4人
話し出した乗客の一番近いのはぼくだから
ぼくは「そうだね」
と答える
返事を待って彼はぼくの近くに座りなおして
ぼくに話かける。
『どこからきたの?』
『学生?、どこに通ってるの?』
ぼくは答え、「きみは?」と同じ質問を繰り返す
『恋人はいる?』
「きみは?」
『いるよ、きみは?』
「ぼくはいない」
『きみは愛についてどう思う?』
「きみは?」
『ただ愛するだけさ』
続き、何か言ってたけど
ぼくの頭はそこで外との回線がきれてしまった。
ただ愛するだけって
それって
ただキスをするってこと?
体のふれあいがあれば
それは愛してる?ってこと?
ぼくは何て答えた?
ぼくが理想としていた「人との繋がり」って?
電車はゆっくりはしりだした
帰路につくぼく1人乗った電車もはしりだした。





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