プロット

文字数 1,231文字

起)今をときめく秀才高校文学者・登尾野雪太(とおの せった)は幼い頃、親友と共に様々なキャラクターを生み出していた。ある日、次の本のプロットが思いつかず悩んでいたところ、親友である天才高校生・加賀谷凪(かがや なぎ)の「子供の頃に書いたキャラクターを使ってみればいいんじゃないか?」という一言で、倉庫にしまい込んでいた昔の自分の創作を探し出すことを決意した。

承)倉庫の中で昔の思い出話に花を咲かせながら膨大な数の紙をしまい込んだファイルを見つけ出す。ところが、開いたファイルの中には使われている筈なのに真っ白な紙ばかりが残っていた。悲嘆に暮れながら、次の日学校に登校するが、クラスメイトの休みがやたらいることに疑問を抱く。「まだ風邪の季節じゃないよな?」そう思いながら、その日一日を過ごした帰り道、大きな悲鳴を聞いた雪太は凪と共に路地裏に駆け込む。するとそこには色を無くしてまるで体中がスケッチブックのラフ画の様に色が奪われた学校の生徒がいた。そしてその傍に消えていったが、同じくラフ画のような色合いの幼い少女がいたことも、雪太は目にしたのだった。最後に少女がか細く言った、「私は私が分からない。」という言葉が雪太には引っかかって仕方がなかった。

転)白くなってしまった学生を一時的に倉庫へと匿った雪太と凪は作成会議をするが話は全然思いつかない。雪太はどこかで少女を見たことある気はするがそれすらもヒントにならないであろう。そうこうしているうちに事態は急変。学校が休校することになり、思わず凪と白紙のファイルを掴んで外に出た雪太は街がどんどんラフ画の様になっていくのを目の当たりにする。雪太は思わず足がすくんでしまうが、凪は雪太の腕を掴んだ。「学校だ。恐らく、お前が言っていた元凶がそこにいる。」と。雪太は凪の目を見て、怯えた心を飲み込み、強く頷いた。

結)学校の校庭の真ん中に、昨日の夕方に見た少女がいた。そして少女に向かって街がラフ画になっていくのを見る。「私は私が分からない。」そういう少女に向かって、雪太と凪は歩き出す。凪はこう言った。「俺は分かる。お前のことが。お前は俺たちが作り出した者、描いた者。」そうして今度は雪太が言った。「お前はゼロ。最初に生み出した、一より始めのゼロ。」言われた少女、ゼロが目を見開いた瞬間、少女が光に変わり、髪の入ったファイルに吸い込まれた。気が付けば校庭のど真ん中で二人は気絶していた。誰にも見つからないように家に戻れば、昨日助けた学生も元通りだった。二人は悩みながらも紙の中に描かれているゼロを見る。「俺たちの創作が紙の外にいっぱい飛び出している。」そんなあり得るはずのない、しかし実際に起こった出来事を前にして悩みながらも、雪太は言った。「とりあえず、ゼロをキチンと書き直そう。そうしたら、彼女も落ち着くよな?」そんなことを呑気に言った雪太の言葉に笑いながらも、凪は笑顔で「そうしよう!」と同意の言葉を述べたのであった。
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