第2話

文字数 2,062文字

 ニーチェはワグネリアンだったんだが途中で宗旨替えしてるらしい。ワグネリアンとは作曲家リヒャルト・ワーグナーの楽劇が特に好きな人たちのことを言う。わざわざこんな言葉があるってことはそこに何かがあるんだが代表的なワグネリアンと言えばアドルフ・ヒトラーとか三島由紀夫……う、うーん……。
 まあ話を進める。因みに私もワグネリアンだったが今はそれほどでもない「トリスタンとイゾルデ」がクソ好きで一回だけだが舞台も観た。C席だったが3万くらいした。今だったら温泉に行ってしまうだろう。「さまよえるオランダ人」「ローエングリン」「タンホイザー」「トリスタンとイゾルデ」などが典型である。
 私が昔読んだ本では「ニーチェはワグネリアンだったが途中でビゼーを反ワーグナー代表として支持する」的な内容だったんだけど音楽的にかと思って頭に疑問符しか浮かばなかったし、読んだ本の著者も疑問を呈していた。……が、オペラの文学的側面が確かにビゼーは反ワーグナーなのである。ニーチェ、男なのにそこまで見えてたんか……そりゃあ生きづらいってかまあこの人発狂してしまうんですが。
 私はニーチェの本を読んでないけど「神は死んだ!」「超人目指さなければ!」→発狂の流れを見て大体のことはわかる。ワグネリアンなのもわかるし宗旨替えしたのもわかる。ワーグナーの楽劇は大体「才能があるが苦悩(原罪に?)している男」に「純潔でその男を心から愛している娘が現れて」救われるっちゅう筋書きでまあ……そういうこと!今現在日本で問題になってる男女の大体のことはワーグナー由来じゃねえか?となる。男は弱くて現実を直視できなくて都合いい若い女を求めてるっていうステロタイプだな(本人たちは都合のいい女を求めてるとは思ってないので社会が悪い的なことを言いがち)ビゼーのカルメンはそりゃあバリバリに反ワーグナー的なものでしょうよ。でも西洋の人は多数が?(それとも陽キャか?マッチョか?)カルメンを支持してる感じがする。肉食系女子だもんな。建前として普通の男には物足りないのよワーグナー乙女は(※日本人の感想です)エロいお姉さん求めるのよ生存戦略の違いから。この生存戦略の違いは「男性主導型」の西洋「女性主導型」の東洋と適当にざっくり言っておく。
 このワーグナー型の救いの話は宮崎駿作品「風の谷のナウシカ」に収斂されていくが(蟲がどう考えても救いを求める男である)アニメーション映画は漫画版の途中でアニメ化されたので漫画版を読めば宮崎駿の思考が透けて見えるという結構へんてこ?な構成になってる。宮崎駿はこのワーグナー型のお話に自分で危機感を持っており「どげんかせんといかん!」と思ったのか漫画版はいろいろ工夫を凝らしてはいるが結局ナウシカ個人は救われずに終わってしまう。ナウシカを救わない代表はアスベルなのだが結局のところ「男が責任を負う」重責に耐えられなかったんだと思う。これは今に始まったことではなく大体男は責任を取らずにのらくら生きるのがデフォで(アスベルを髪結いの亭主にはしたくなかったのだろうか?)現代ではその責任の無茶振りにかなり男が陰険なことになっている(気がする)。物理的に強くても関係なくなってしまった世の中になったので己の社会的位置付けが難しい。そして、ミソジニーやらインセルやら女がいないと男はどうにもならんのか?と思うが江戸時代の日本では男の方が多い江戸の町が結構平和に保たれてるのでここら辺を深堀りすればこれからの何かの役に立つかもしれない。個人的には「風の谷のナウシカ」でナウシカほど強い姫さまがどうやって救われるのかを少女漫画ではない方法論で誰か描いてくれないかとか思っているのだ。まあ少女漫画でも画期的だろうけど。少女漫画ではやっぱり男が強く女が弱い(弱くていい)という括りがあってつよつよ女になって責任を取りたくない~ってのが基本なのだ。エンタメやからのう。そこにナウシカは生まれない気がする。(「もののけ姫」なんかはナウシカに祭り上げられた女の救済のためのお話だと思ったがそれをやりきれなかったというか……時期尚早だったのかもね!終盤グダグダ展開)
 ここで降臨するのが朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の大月錠一郎である。彼は人の心に寄り添うのが得意でっていうか繊細で多分争いごとが嫌いだろうと思う。因みに威勢のいい江戸っ子気質からは想像出来ないが、昔はうぶで真面目で遊びなんて大嫌い、という男も結構いたらしい(……と落語の本に書いてあった)太陽神が女の国はやはりひと味違う。そんなよわよわ真面目男子の間に「西洋式!」社会が来るの地獄だろ。富国強兵!そんな地獄に彼はいた。2代目ヒロインを救うのに彼はいた!これはもうドラマを見てくれ~としか言えないが、卑屈にならない自然体の彼は凄いと思う(演者オダギリジョーが凄いのか)彼を働かせなかった制作陣も凄い。拘ったんだねえ。完璧な人なんて本当にいないんだと実感してるし救われる救われないは覚悟の差だと思いました。
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