第1話
文字数 866文字
その夜私は夢を見た。彼の夢だ。
私は職場で移動があり新しい部署に配属になった。その時の上司が彼だった。彼は私より3歳年上だった。初めはいい加減な人なのかと思った。「適当でいいぞ~」とか「頑張るのは不得意分野だ」とか言っていたから。でも彼と接しているうちに本当は誰よりも努力家で誰よりも優しい人だと知った。
ある秋の夜、彼は私に好きだと言ってくれた。すごく嬉しかった。彼の側にいたい。彼を支えたい。素直にそう思えた。彼もまた押し付けることなく「俺がそうしたい」という理由で私を大切にしてくれた。
誰よりも愛していた。この世界の誰よりも。彼が幸せになれるのならその隣にいるのが私じゃなくてもいいと思った。ただ彼を見ていたかった。
しかし幸せな時は一瞬で、私は彼と離れ離れになった。もうこの世界に彼はいない。私は毎日彼のことを思った。朝目覚めた時。夜眠る前。彼の優しい顔、私を呼ぶ声。なにもかも愛おしい。会いたい。彼に触れたい。抱きしめて欲しい。
死んだら会えるかもしれない。そう思う日もあった。
そして昨日、私は夢を見た。沢山の人の中から私は彼を見つけた。手を伸ばすと彼はその手を握ってくれた。
「見つけてくれてありがとう」
彼はそう言って微笑んだ。
優しい眼差し、声。彼だ。彼が目の前にいた。私は彼を見て泣きそうになった。しかし彼は私の両ほっぺを掴むとむにっと引っ張った。
「笑え」
そう言って微笑む。昔彼が私にそうしたように。私は懐かしくて胸がいっぱいで泣きながら微笑んだ。
「やっと会えた」
私はそう言った。彼は微笑んだまま私を見ていた。
「前世で待ってる」
彼はそう言って私にキスをした。
目覚めると私は泣いていた。彼の唇の感触がまだ残っている。
「来世じゃなくて前世なの?」
彼らしいその言葉に私は少し笑った。
「前世ってどうやって会いに行ったらいいのよ」
私は幸せな気分でベッドから起き上がるとカーテンを開けた。強い日差しに目を細める。今日も暑くなりそうだ。
私は彼の好きだった豆でアイスコーヒーを作ることにした。キッチンのカレンダーを見るとちょうど7月7日だった。
私は職場で移動があり新しい部署に配属になった。その時の上司が彼だった。彼は私より3歳年上だった。初めはいい加減な人なのかと思った。「適当でいいぞ~」とか「頑張るのは不得意分野だ」とか言っていたから。でも彼と接しているうちに本当は誰よりも努力家で誰よりも優しい人だと知った。
ある秋の夜、彼は私に好きだと言ってくれた。すごく嬉しかった。彼の側にいたい。彼を支えたい。素直にそう思えた。彼もまた押し付けることなく「俺がそうしたい」という理由で私を大切にしてくれた。
誰よりも愛していた。この世界の誰よりも。彼が幸せになれるのならその隣にいるのが私じゃなくてもいいと思った。ただ彼を見ていたかった。
しかし幸せな時は一瞬で、私は彼と離れ離れになった。もうこの世界に彼はいない。私は毎日彼のことを思った。朝目覚めた時。夜眠る前。彼の優しい顔、私を呼ぶ声。なにもかも愛おしい。会いたい。彼に触れたい。抱きしめて欲しい。
死んだら会えるかもしれない。そう思う日もあった。
そして昨日、私は夢を見た。沢山の人の中から私は彼を見つけた。手を伸ばすと彼はその手を握ってくれた。
「見つけてくれてありがとう」
彼はそう言って微笑んだ。
優しい眼差し、声。彼だ。彼が目の前にいた。私は彼を見て泣きそうになった。しかし彼は私の両ほっぺを掴むとむにっと引っ張った。
「笑え」
そう言って微笑む。昔彼が私にそうしたように。私は懐かしくて胸がいっぱいで泣きながら微笑んだ。
「やっと会えた」
私はそう言った。彼は微笑んだまま私を見ていた。
「前世で待ってる」
彼はそう言って私にキスをした。
目覚めると私は泣いていた。彼の唇の感触がまだ残っている。
「来世じゃなくて前世なの?」
彼らしいその言葉に私は少し笑った。
「前世ってどうやって会いに行ったらいいのよ」
私は幸せな気分でベッドから起き上がるとカーテンを開けた。強い日差しに目を細める。今日も暑くなりそうだ。
私は彼の好きだった豆でアイスコーヒーを作ることにした。キッチンのカレンダーを見るとちょうど7月7日だった。