第1話

文字数 416文字

起)「勝つことだけがすべてだ」そう想い込んでいた男がある日、独りの子供に出会う。その子はじゃんけんをしてもいつもパーしか出さない。男は「出さないんじゃなく、出せないんだな」
そう判断する。
承)男はその子とじゃんけんをする。何度、やっても「チョキ」で勝ち。いつも、勝ってしまうことに飽き飽きした気持ちをも抱くようになる。
転)だが、負けることも嫌な男はその子にじゃんけんというものはどういうもので、どういう出し手があるのかを教えたりしても、その子は「パー」ばかりを出していつも笑っている。
結)男はある日、様々なことを考え、その子とじゃんけんをしたら、なぜだか、「パー」を出してしまった。そうしたら、その子は満面の笑みで心から嬉しそうだった。男はその子のもっと喜ぶ姿が見たくて「グー」をだした。それでもその子はニコリともしない。それから、男は「パー」を出し続けた。その子は声を挙げ笑い出し、男も笑い出し、その二人の声は本当に幸せそうだった。
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