第1話

文字数 1,566文字

 むかし、あおいそらのしたの、とおいとおいどこかに〈ゴリュウ〉というくにがありました。
 ゴリュウは、もう、ずっと、なんびゃくねんもへいわでした。こくおうがくらす、まっしろい、ごうかなおしろでは、まいばん、ぶとうかいがひらかれ、きぞくやへいみんたちがまねかれて、よあけまでおどりつづけます。あそぶのがあたりまえでした。

 けれど、おうのひとりむすめのランファだけは、ちがいました。
「わたしは、ぶとうかいより、ほんがすき」
 ランファはほんをよむことがすきです。
 おおひろまでぶとうかいがはじまると、ランファはひとり、ひがしのとうにむかいます。そこはむかしのとしょしつでした。くらくて、ぶきみだからと、だれもちかよりませんが、たくさんのほんがよめるので、ランファのおきにいりのばしょでした。
「しらないことを、しるのはたのしいわ」
 それがランファのくちぐせです。

 そのよるも、ランファはとうをのぼり、ほんのやまにかこまれながら、そのなかのいっさつをよんでいました。
 すると、とおくからながれる、ぶとうかいのおとが、とつぜんやみました。
「きゃー!」「わー!」と、ひめいがします。ランファがとうのまどからのぞくと、ひとびとが、いちもくさんにしろをにげていくのがみえました。
 ランファはいそいでとうをおりました。おおひろまにいくと、へいしたちが、こくおうと、おうひにけんをむけていました。めいれいしているのは、なんと、だいじんです。
「ゴリュウは、わしのものだっ!」
 くにをのっとるためのはんらんです。へいしたちは、だいじんからもらったおかねのせいで、かれのいいなりになっていました。
 だいじんは、おうや、おうひ、ランファをろうやにとじこめようとしましたが、ランファはだいじんにおねがいをします。
「わたしは、ひがしのとうがいいわ。ほんがあるから、たいくつしないもの」
 にげるつもりではと、だいじんはうたがいましたが、とうは、おくじょうにまどがひとつあるだけで、にげられません。ランファはのぞみどおり、とうにとじこめられました。 
 それからなんにちも、しろはしずかでした。もうぶとうかいもひらかれません。ランファがいるとうからは、ほんをめくる、パラパラという音がするだけです。

 あるひのこと。ランファが、とうのまどから、かおをのぞかせました。くもひとつない、あおぞらにむかって、まじないのようなうたをうたいはじめます。
 うたごえをききつけただいじんが、とうのしたにいくと、どこからか、バッサバッサと、はばたきのおとがして、おおきなあおいりゅうが、しろにむかってとんできました。
 りゅうは、ランファのうたにみちびかれるように、とうのてまえでとまります。そして、バサァー、バサァーと、つばさでおこしたおおかぜで、だいじんを、とおくへとふきとばしてしまいました。

 おうと、おうひをろうやからたすけだしたランファは、ふたりにおしえました。
「このくにの〈ゴリュウ〉というなまえは、りゅうがまもるといういみよ」
 しかし、たみは、ながねん、ぶとうかいにあけくれたせいで、りゅうをひつようとしなくなり、わすれてしまっていたのです。ひつようとされなくなったりゅうは、くにのどこかで、ねむりについていました。ランファだけが、ほんをよんで、そのことをしっていたのです。
「わたしは、りゅうをめざめさせるほうほうをしりたくて、わざととうにとじこめるようおねがいしたの」
 そのほうほうは、とてもふるいほんに、むずかしいことばでかかれてありましたが、ほんずきのランファはよめたのです。
 おうは、あそんでばかりいたのをはんせいし、ぶとうかいをひらくのは、はんとしにいちどだけにしました。
 ランファは、りゅうとともに、このくにをよくささえ、ゴリュウはながくさかえたということです。
 
 

 
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