第1話

文字数 2,317文字

 アメリカが中国に対する輸入品の関税を上げ、キナ臭いなと思った日本人は多かったと思う。ちょくちょく出入りしている中国人企業に行って「どう思う?」って番頭に聞いた所。
「ああ、経済戦争でしょ。でも損するのはアメリカ人。中国には何のデメリットはないよ。だってアメリカで作るより安いから買ってた訳だから」
 と言う。中国現地にいる中国人はどう思っているかは分からぬが、日本にいる中国人は楽観的だ。
 しかし、不可解な話である。私もLAやテキサスのスーパーやホームデポを見たが、ほぼ中国製品である。日本製はSONYのブースがある位なのだが、着る物、履く物ほぼ中国製であった。食品位しかアメリカ製は見当たらない。それが九〇年代には出来上がっていた。国産で対抗するとはいえ、アメリカ人が今更、機織りを始めるとは想像し難い。そこで色々推論してみた。
 
 そもそもGDP世界一のアメリカなのだが、何とその70%は自国消費である。まあ、彼らの食生活を見れば分かるのだが、日本人の倍は食う。以前、LAのレストランでスパゲティを頼んだら、誰がこんなに食うんだって位出てきた。ビールを頼んだら金魚鉢のような入れ物に入って出て来た。よってアメリカ人は歳を取ると皆、ビヤ樽のような体型になる理由が判明する。平均寿命が伸びないのもあれだけ食うからだと理解した。ガソリンも広い国土の為か、日本人の倍は消費する。裕福を謳歌するのがアメリカ人だ。姑息に貯めて、死んだら国にガッポリ相続税をむしり取られる日本人とは根本違い、子供に教育を与えるまでが親の努め、後は子が勝手に人生を切り開くものという思想がある。だから生きているうちに金は使うものという考えだろう。
 
 関税を上げたからって、発注する時は基本現金払い(L/Cなど銀行介入決済もあるが、基本入金確認後出荷)で中国企業は腹の痛む問題ではない。だが、海の上の商品もアメリカに入港した途端に関税の請求が来る。これを払わない事には国内に持ち込む事は出来ない。入るものによって関税率はバラバラ。私も昔、欧米から建材を輸入する仕事をしていたのだが、例えば、ドアだけを輸入したら関税が7%かかるのだが木材を混載すると関税0であった。間違いなくアメリカの圧力で「木材買えよ」という意図からである。そもそも関税は国が決めるものだが、こういった背景もある。(誰が嵩張る木材なんかをコンテナに入れなきゃいけねえんだよボケ。と無視していたが)
 ちなみに輸入した場合、港に入った時点で消費税も発生する。根本、安く入り過ぎては国内企業が惨敗してしまうという保護措置が大義名分なのだが、とどのつまりは税金である。国は結局儲かるのだ。
 トランプ大統領は貿易不均衡の是正と言っているが、私が一番最初に? と思ったのは「よくアメリカの企業が文句言わないな?」であった。突然に近いタイミングで関税を上げたのである。原価計算もあったもんではない。海の上にあった商品が港に入った途端、原価が上がっているのだ。普通なら百姓一揆ものである。
 アメリカ人は食い過ぎ、使い過ぎだから延命の為減らしなさいというのなら分からない事はないが、それは考えづらい。そこで推論。
 
 習近平とトランプがダチだったらどうだろう?
 
「習ちゃん、税収アップの為にお互い関税上げるってのはどう? 大義名分は経済戦争って事で」
「トラちゃん、いいね。お互いネット上で批判しあってる事だし、理に適ってる」
「まあ、うちもGDP世界一と言いながら、殆どは阿呆な百姓だしね。きっと納得すると思う」
「うちだって上昇志向でアメリカ嫌いな国民も多いしね。経済戦争って肩書なら納得するだろう」
「よっしゃ、そういう事で。でも同時一緒にやらなきゃな」
「でも、うちは六〇〇億に関税って少なくないか? トラちゃん」
「いいよ、習ちゃん。願い事があれば聞くよ」
「じゃあ、トラちゃん。さっきも言ったネットの事なんだが。うちの国は一党支配でやってきた国だ。それが今やネットで世界が繋がったような錯覚を与えている。別にうちは資本主義にならなくても繁栄出来た訳だ。そもそも国には国の事情や繁栄の仕方があって当然だろ? だから国民がネットで楽しむのも良いが国内だけでやって、よその国が見たいなら海外に行けよって話だ」
「ほうほう、難しそうだな、習ちゃん」
「いや、トラちゃん。難しくはないんだ。うちのファーウェイがあるだろ? あの会社をアメリカから排除してくれればいいんだ。理由は5G移行にあたって情報漏えいの危険があるって事で。ネットは欧米と中国で世界二分してもらいたいんだ。そうすれば国内統治も楽になる。OSの問題だって、所詮、AndoroidだってオープンソースのLinuxだしな。作れない事はない。検索のGoogleなんてもってのほか。出来たらアップルも中国から排除したいところだ。同盟国の日本だってアップルを排除されたら困るが、ファーウェイなら打撃も今ならないだろ?」
「ほお、成る程な。私も先代のブッシュ親子のように有無を言わせず戦争をしかけるような阿呆ではない、元来ビジネスマンだ、ネットはうまく使わせて頂いているよ。まあ、中国が繋がらなくなれば、ある面やりやすいかもしれないな。まあ、同じヤハウェ信仰であるユダヤとイスラム、キリスト教徒が争う宗教戦争に比べればマシだよな。それは呑むとしよう」
「まあ、うちはアメリカ人嫌いだしな。励みに頑張って良いものを作ってくれると信じているよ」
「うちも中国人は嫌いで、ある意味脅威を持ってるから大丈夫だろうな。ハハハ」

 って私の妄想。
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