第1話

文字数 1,265文字

起)
運動音痴で絵だけが特技の龍輝は美術部の高校3年生。一方的に龍輝を気になっているのがクラスメイトで陸上部の優奈。
優奈は自分と違う才能を持つ龍輝に惹かれ何かと話しかける。龍輝は女性が苦手で素っ気なく返していたが、本当は気になる存在だった。

承)
ある日、優奈は公園で一匹の青い毛並みの猫に餌を与えている龍輝の姿を見る。龍輝は優しく猫を撫でていた。優奈は近づき龍輝に話しかける。龍輝は、「この猫の毛の色はアクアマリンなんだ」と言った。猫を通して初めてまともな会話をした二人。二人で「マリン」と猫を名付けた。
翌日、優奈は体調が悪くなり、早退することになった。優奈が徒歩で帰る中、公園のベンチで一休みをしていると、マリンが優奈の傍らにやって来た。
「私もあなたみたいにかまわれたいな・・・」
優奈が思わず呟いてみる。
優奈の両親は離婚寸前で喧嘩ばかりで、家に帰ることも本当は嫌だった。
優奈の膝に乗る猫が優奈を見つける。
「あなたは私、私はあなたになりましょうか」
猫の声が聞こえた気がした。
優奈が頷く。・・・と意識を失っていた。

転)
気が付くと優奈は病院に運ばれていた。
夜の歩道でマリンはクラスメイトの友人から優奈が救急車で病院に運ばれたことを知る。
その時、優奈はマリンと自分が入れ替わったことを知る。
病院で寝ている優奈(中身はマリン)を龍輝が見舞いに行く。優奈は龍輝に抱きついて「また来てくれたんだね」と泣いた。
その夜、公園に龍輝が現れて「遅くなってごめんな」と猫の優奈に餌を与えた。
猫の優奈は「帰る家がない」と鳴いた。龍輝には伝わらない。
龍輝の後を追って猫の優奈は龍輝の家まで着いていった。
母親にはさんざん怒られたが、龍輝の家で飼われることになった。
元気になった優奈(中身はマリン)は、龍輝と付き合うことになり、三人が遭遇する度に女同士の喧嘩が始まるのだった。
龍輝が美大生になり、優奈は体育大学へ進学した。龍輝がひとり暮らしになると、優奈(中身はマリン)が龍輝の部屋に訪れると、マリン(中身は優奈)は毛を逆立てることもしばしば。
龍輝を二人で共有しようと話し合った優奈とマリンは、時々入れ替わることにする。ただ、デートの行き先で行きたいところや食べたいものでは、「自分が行きたい!」と揉めることも多々あった。

結)
優奈が20歳の時、離婚して別居した父から手紙をもらう。それはこれまでを悔やむ手紙だった。
それを読んだマリンは、自分を生んだ親のことを思い出した。猫のマリンは、捨てられた猫だった。優奈の父との再会を見て、人の親は子供をずっと忘れないものだと知る。
猫の寿命は人間ほど長くはない。20歳前後だ。マリンは、龍輝の未来を託して最後にお互い元の自分に戻ることにした。
龍輝の絵が世界的なコンクールで認められた時、優奈とマリンは二人で喜んだ。
その翌日、マリンは死期を感じていなくなる。
マリンを探す龍輝は、優奈にマリンの面影を見つける。優奈を通してマリンの最後の声を聞く龍輝。
「私達を大切にしてくれてありがとう」
龍輝は、二人が一つだったことをその時知った。
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