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文字数 655文字

ある晩、白の天使は黒の悪魔にこう告げました。
ごめんなさい、黒の悪魔様。
もう、あなたと共に過ごすことはできません。
一体全体、どうして、そのようなことを言うのだね?
女神になることが決まったのです。
私はこの世界の『祈り』そのものとなるのです。
地上はゆっくりと光によって満たされることでしょう。

だから、ごめんなさい。
もうこの戦争に、黒の悪魔様が勝利することもありません。
勝利など、どうでもよいのだよ。
白の天使よ、そなたと共に居られるのならば。
ごめんなさい、黒の悪魔様。
貴方の側に居ることはできません。

でも、安心して下さい。あなたが私に向けて下さるそのお気持ちも、やがて消えてなくなるでしょう。
なくすはずがあるものか。
それとも何かしらの根拠があるのか?
女神になるということは、
この世界を構成する草や木や花、大地に海に空、天の星々、そういったものの全てになることと同じことなのです。
私たちは、その全てを同時に感じとることはありません。
私の存在は空気のように薄れゆき、やがて、人々の記憶からも忘れ去られることでしょう。
馬鹿を言うな!
どんなことがあろうとも、忘れるものか!
ならば、約束を致しましょう。
二人はそれぞれ贈り物を取り交わすことにしました。

白い天使は天井に最も高く輝く星より紡いだリボンを。黒の悪魔は、黒い太陽より捻り出だした指輪を。


お互いの血による契約でした。


贈り物はみるみる色を変えていきました。


真っ白だったリボンは、白の天使の血を浴びて、真っ赤になりました。


漆黒の指輪は、黒の悪魔の血を浴びても、黒のままでした。

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登場人物紹介

白の天使

黒の悪魔

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