プロローグ

文字数 1,068文字

燃え盛る家の中で一人の少年がうずくまっていた。
その腕の中では苦しそうに息をする一人の少女が抱えられていた。

「くそっ・・・早く外に出ないと・・・・」

そう言って少年は少女を背負おうとするが意識の無い少女の体を
支えるのは少年には難しくすぐに床へと倒れてしまう。

「くそっ・・・誰か!!俺の妹を助けてくれ・・・ゴホッゴホッ」

少年がいくら叫ぼうとその声は煙に包まれ消えてしまう。
しかし、そんな少年に後ろから声が掛けられた。

「そこの小僧っ子や、助けてほしいか?」
「誰だ・・・?」
「儂が誰かは後回しにせぇ、それよりその娘助けたいかの?」
「・・・ああ」
「ならば、儂と結べ魂を結ぶ誓約を」
「魂を・・・結ぶ・・?」
「ほら、時間は無いぞさっさと決めるのじゃ」

声に急かされ少年の内心には焦りが見え始めていた。
少年が戸惑っている間にも背中の少女は
少しづつ弱り始めている。

「・・・・・する」
「なんと?」
「オレはお前と誓約でもなんでも結んでやる!!だから頼む
楓を、オレの妹を助けてくれ!!」
「良かろう、儂の名はアクジキ貴様の名は?」
「誠だ」
「良いか誠、一瞬だけ儂が貴様の妹の物量を


その間に一気に外へと駆け抜けるがよい」

誠が何かを言う前に次の瞬間には背中の楓がふわっと
存在しないかのように軽くなる。
その瞬間に誠は一気に外へと走り始める。
不思議と誠の目の前に広がる炎の海が何の前触れもなく消えていく。
しかし誠にそんなことを気にしている余裕はなく
誠はそのまま一気に外へと駆け抜けた。
誠が外に出るとひんやりとした風が炎によって熱された誠と楓の体を冷やす。
ホッと誠が一息つくと
不意に後ろからまた声が聞こえた。

「さて、うまく抜け出せたの誠」
「お前は一体・・・」

誠が後ろを振り返るとそこには真っ黒なセーラー服に赤いリボン
首元にマフラーを巻いた短髪の女性がたっていた。

「アクジキ、それが儂の名じゃよ我が主殿」
「とりあえず、楓を助けてくれてありがとうな」
「例には及ばぬ、と言いたい所じゃが早く医者に見せんと
せっかく救った命が無駄になってしまうぞ」
「な、じゃあはやく病院に行かないと」
「その心配は無用じゃ、ホレ」

アクジキの指さした方からちょうど消防車と一緒に救急車が
誠たちの方へと走ってくる。

「なあ、アクジキお前は一体・・・」

誠がそう言いかけて振り返った時にはそこにはアクジキの姿はなく
ただただ、炎によって燃え盛る住宅の匂いだけが漂っていた。
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