第14話 心形刀流 伊庭想太郎

文字数 685文字

肉親の人生が鮮やかであるほど

その身内は苦労するものらしい

これは

そんな男の話・・・

 心形刀流 伊庭八郎の生涯は確かに鮮やかであった。

 伏見 上総 沼津と転戦するにつれ、幕軍遊撃隊 伊庭八郎の名は

官軍中に知れ渡った。



そして

明治2年ーーー

想太郎よ

私は

榎本(武揚)さんと

函館に行くことに

した・・・



兄上は

もう充分

戦ったでは

ないですか

箱根三枚橋で

8人を相手にし

片腕を失いながら

敵をすべて斬った話は

今は伝説です・・・


榎本さんは

変節するだろうが

私は

函館で

死ぬつもりだ


兄上・・・
ついては

心形刀流 宗家は

想太郎

お前が継いでくれぬか

伊庭八郎の言ったとおり

彼は函館で戦死し

榎本武揚は官軍に投降する

 歴史の機微というか、後年 榎本が東京農学校(現東京農業大学)を創設したとき

伊庭想太郎は、校長に迎えられたのである。しかも生徒が集まらないといって、榎本は

学校運営から、手を引いてしまった。


 

(やはり

兄上の言ったとおり

榎本は、腰の据わらぬ人物でした)

兄のように

鮮やかに生きたい

伊庭想太郎のなかで

その思いは一層強くなった・・・

そして

明治34年ーーー


伊庭想太郎は、白昼、東京市参事会議事室で

元逓信大臣 星亨(ほしとおる)を暗殺することになる


伊庭さん

あなたほどの人が

どうして

白昼 暗殺など

する気になったんですか?

星は、

腐敗政治の

元凶じゃ

天下国家の為

『公盗の巨魁』を斬った・・・

でもね

後で星の資産を調べたら

書物と借金だけでしたよ・・・


・・・・・
大学の学長だった人物が、テロリストになった例は

たぶんこの男だけだろう・・・・・

           参考文献  柴田錬三郎「心形刀」  山田風太郎「人間臨終図鑑」
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登場人物紹介

土方歳三  新選組副長

沖田総司   新選組一番隊組長

三浦啓之助(佐久間格二郎)

芦屋 昇  新選組隊士 

前首相

元首相

仙人

プリンセス

婚約者

山田浅右衛門

婚約者の母

伊庭八郎

伊庭想太郎

看守

伊勢屋質店 店主

久佐賀 義孝 高利貸し

森 林太郎 

一葉

くに       一葉の妹

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