第1話
文字数 2,000文字
「これから決行です」
バイブ音と共に誰かのケータイにそんなメッセージが送られてきた…
佐藤美幸 はキッチンで二つのカップにコーヒーを注ぎ終えると、背後を確認してポケットから小瓶を取り出した。そしてそれぞれのカップに半分ずつ中身を垂らし、素早くボケットにしまった。
「コーヒー入ったわよ」
美幸はリビングに置いてあるテーブルに二つのカップを運んだ。
「ありがとう。ごめん、やっぱり今はシュガーを入れたい気分かな…」
テーブルの前にあるソファに座っていた佐藤晴樹 が申し訳なさそうに美幸にそう言った。
「えぇ、さっき無糖がいいって言ってたのに…わかったわよ」
美幸は降ろしかけていた腰をまた持ち上げ、キッチンに向かった。
美幸は気がつくと薄暗い場所に立っていた。
「え?はるくん、どこ?」
先程まで夫の晴樹とリビングでコーヒーを飲みながら話していたはずだった。そして、段々と頭が重くなっていったところまでは覚えている。
「死ねたのかしら」
美幸はそう言った。そして、目の前に続いている道をゆっくりと歩いた。暗いその道は両側にある微かな光を放つ壁によって、足元がやっと見える程度だった。が、突然右側のスクリーンが大きく光りだして何かが浮かび上がった。
「これって…私の思い出?お父さん、お母さんだ」
美幸が進むにつれて美幸の過去の思い出が時系列順にスクリーンに現れた。若かりし頃の両親が自分に優しく微笑みかけるシーンがたくさん、そして、小中高と自分の成長に合わせて様々な知り合いとの思い出が次々と映し出される。
「懐かしいな…」
そして、ついに一つめの運命の出会いの場面が現れた。
「りっちゃん…」
河村律子 、大学進学と共に上京してきた美幸に一番最初に出来た大学での友達だった。
「本当に仲良かったよね…」
二人で行った数々の場所が明細に映し出される。そして、その出会いからしばらく経って大学卒業一ヶ月前、二つ目の運命の出会いが起きる。佐藤晴樹との出会いだ。そして夢中で歩いていた美幸は誰かにぶつかった。
「ごめんなさい…って、はるくん!」
「美幸!」
二人は驚いた。こんなところでまた会うとは思ってもいなかった。と言っても、ここがどういう場所なのかわかってもいなかったが。晴樹は晴樹で自分の過去の思い出を見てきたところだった。そして美幸との出会いのシーンにきたところだった。
「私たち、死んじゃったのかな?」
「わからない…でもそうかもしれない」
少し嬉しそうな美幸と悔しそうな晴樹は並んで目の前の道を歩いていく。右側には美幸の思い出、左側には晴樹の思い出が流れている。
進むにつれて、二人の思い出が重なる頻度が増えていく。そしてついに結婚式を迎えた。
「ふふ、あなたのおとうさん泣いてるね」
懐かしみながら足取り軽く進んでいく美幸、スクリーンには興味を見せず足取りの重い晴樹。
両端のスクリーンに山の風景が現れ始めた。
「あ、あのときのキャンプよ。私の友達とあなたの友達も呼んだあのキャンプ」
「そうだな…」
すると、晴樹は歩く速度を上げ始めた。
「どうしたの?急に。さっきまで私に引っ張られていたくせに」
「……」
答えずにどんどんと前へ進む晴樹だが、美幸がスクリーンを指差して立ち止まる。
「やっぱり、このときからだったのね」
美幸が他人と話している間、晴樹は律子にばかり話しかけていた。
「かわいいもんね、あの子。ここからが楽しみだわ」
美幸は次々と指差していく。
「この日も、この日も、あのクリスマスの日もだったのね…」
美幸が一人で家にいる情景が映し出されているなか、晴樹は律子と二人で過ごしている姿が映し出されている。
「気づいてないと思っていたの?ねえ、いつまで無視するの?」
「……」
答えもせずにひたすら歩く晴樹。
「まぁ、いいか。私は今あなたと二人きりでいれるものね」
美幸は晴樹に並ぼうとする。
「ねえ?」
「くそ…なぜだ、ここは本当に死後の世界なのか?」
突然大声を出して晴樹はそう言った。
「きっとそうよ」
「なんでそんなはっきりと言えるんだよ!それにそうだとしたらなんで俺も…」
「なぜって?私がやったからよ!」
「は?」
「だから私が、あなたと私を殺したのよ」
「なんでだよ!」
「なんでって?あなたを独り占めにしたかったの。ほら、もうすぐよ」
ついにあの夜がやって来た。
「見て私がコーヒーに毒を入れてるのよ」
あの風景が美幸の思い出のスクリーンに映し出されている。
「くそ…おまえも…」
「え?はるくん、どういうこと?」
美幸が晴樹に頼まれ再びキッチンに向かうと、晴樹はポケットから小瓶を取り出して美幸のカップに中身を入れた。
「そんな…はるくん、私を殺そうとして…」
「おまえもだろ」
「私は二人で一緒がよかったの…」
「おれは律子と一緒になりたかったんだよ」
スクリーンの中で晴樹は律子にメッセージを送っていた。
「これから決行です」
バイブ音と共に誰かのケータイにそんなメッセージが送られてきた…
「コーヒー入ったわよ」
美幸はリビングに置いてあるテーブルに二つのカップを運んだ。
「ありがとう。ごめん、やっぱり今はシュガーを入れたい気分かな…」
テーブルの前にあるソファに座っていた
「えぇ、さっき無糖がいいって言ってたのに…わかったわよ」
美幸は降ろしかけていた腰をまた持ち上げ、キッチンに向かった。
美幸は気がつくと薄暗い場所に立っていた。
「え?はるくん、どこ?」
先程まで夫の晴樹とリビングでコーヒーを飲みながら話していたはずだった。そして、段々と頭が重くなっていったところまでは覚えている。
「死ねたのかしら」
美幸はそう言った。そして、目の前に続いている道をゆっくりと歩いた。暗いその道は両側にある微かな光を放つ壁によって、足元がやっと見える程度だった。が、突然右側のスクリーンが大きく光りだして何かが浮かび上がった。
「これって…私の思い出?お父さん、お母さんだ」
美幸が進むにつれて美幸の過去の思い出が時系列順にスクリーンに現れた。若かりし頃の両親が自分に優しく微笑みかけるシーンがたくさん、そして、小中高と自分の成長に合わせて様々な知り合いとの思い出が次々と映し出される。
「懐かしいな…」
そして、ついに一つめの運命の出会いの場面が現れた。
「りっちゃん…」
「本当に仲良かったよね…」
二人で行った数々の場所が明細に映し出される。そして、その出会いからしばらく経って大学卒業一ヶ月前、二つ目の運命の出会いが起きる。佐藤晴樹との出会いだ。そして夢中で歩いていた美幸は誰かにぶつかった。
「ごめんなさい…って、はるくん!」
「美幸!」
二人は驚いた。こんなところでまた会うとは思ってもいなかった。と言っても、ここがどういう場所なのかわかってもいなかったが。晴樹は晴樹で自分の過去の思い出を見てきたところだった。そして美幸との出会いのシーンにきたところだった。
「私たち、死んじゃったのかな?」
「わからない…でもそうかもしれない」
少し嬉しそうな美幸と悔しそうな晴樹は並んで目の前の道を歩いていく。右側には美幸の思い出、左側には晴樹の思い出が流れている。
進むにつれて、二人の思い出が重なる頻度が増えていく。そしてついに結婚式を迎えた。
「ふふ、あなたのおとうさん泣いてるね」
懐かしみながら足取り軽く進んでいく美幸、スクリーンには興味を見せず足取りの重い晴樹。
両端のスクリーンに山の風景が現れ始めた。
「あ、あのときのキャンプよ。私の友達とあなたの友達も呼んだあのキャンプ」
「そうだな…」
すると、晴樹は歩く速度を上げ始めた。
「どうしたの?急に。さっきまで私に引っ張られていたくせに」
「……」
答えずにどんどんと前へ進む晴樹だが、美幸がスクリーンを指差して立ち止まる。
「やっぱり、このときからだったのね」
美幸が他人と話している間、晴樹は律子にばかり話しかけていた。
「かわいいもんね、あの子。ここからが楽しみだわ」
美幸は次々と指差していく。
「この日も、この日も、あのクリスマスの日もだったのね…」
美幸が一人で家にいる情景が映し出されているなか、晴樹は律子と二人で過ごしている姿が映し出されている。
「気づいてないと思っていたの?ねえ、いつまで無視するの?」
「……」
答えもせずにひたすら歩く晴樹。
「まぁ、いいか。私は今あなたと二人きりでいれるものね」
美幸は晴樹に並ぼうとする。
「ねえ?」
「くそ…なぜだ、ここは本当に死後の世界なのか?」
突然大声を出して晴樹はそう言った。
「きっとそうよ」
「なんでそんなはっきりと言えるんだよ!それにそうだとしたらなんで俺も…」
「なぜって?私がやったからよ!」
「は?」
「だから私が、あなたと私を殺したのよ」
「なんでだよ!」
「なんでって?あなたを独り占めにしたかったの。ほら、もうすぐよ」
ついにあの夜がやって来た。
「見て私がコーヒーに毒を入れてるのよ」
あの風景が美幸の思い出のスクリーンに映し出されている。
「くそ…おまえも…」
「え?はるくん、どういうこと?」
美幸が晴樹に頼まれ再びキッチンに向かうと、晴樹はポケットから小瓶を取り出して美幸のカップに中身を入れた。
「そんな…はるくん、私を殺そうとして…」
「おまえもだろ」
「私は二人で一緒がよかったの…」
「おれは律子と一緒になりたかったんだよ」
スクリーンの中で晴樹は律子にメッセージを送っていた。
「これから決行です」