第1話

文字数 607文字

 「生まれ変わりって信じます?」と私がなにげなく聴いたら、村上さんは少し考えて「都合がいいことなら」と言った。
 大学に入って、初めてできた話し相手。連絡先を交換したものの、学校内でしか会わないから、友人と呼べるか、まだ微妙なところ。
「都合がいいって?」
「星座占いもそうやけど、いいこと言われとったら信じるかんじ。でも、男女の双子が心中したカップルの生まれかわりみたいなやつは信じへん。心中っていう行為が生まれる前から、双子は存在するはずやから」
 同じ理由で、六道輪廻(天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道)も信じていないそうだ。
「ねこちゃんが人間より劣るとは思われへん」
 はきはきした物言いと、ねこちゃんという柔らかい呼び方のギャップがやけに印象に残った。
 村上さん、猫好きなんだ。
 私は犬派で、猫は好きでも嫌いでもなかったけれど、それ以来、生活圏で猫を見かけることが多くなった。テレビやSNSの動画で猫を見るたび、村上さんの「ねこちゃん」が耳の奥でよみがえる。
 村上さんが猫に生まれ変わりたいならば、私は犬がいい。種族が違ってても、仲良くなれるだろうか。犬と猫を飼っている人の動画を観れば、しっぽを振って仲良くなりたい犬に猫が牙をむきだして威嚇していた。来世の友情は無理かもしれない。でも今生ならば?
 いつのまにか、スマホには猫のスクショがいっぱい、あふれている。今度、村上さんに猫カフェに誘ってみよう。
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